氷混じり飲料作れる冷蔵庫・冷感パンツ…“猛暑は商機”アイデア商品、まるっと紹介
記録的な猛暑が続く日本列島―。これまで経験したことのない暑さは、人の健康だけでなく日常の経済活動にもさまざまな影響を及ぼすことが懸念される。その一方、猛暑で生まれるニーズにいち早く着目し、アイデアを絞った製品を開発・発売するメーカーもある。猛暑をチャンスと捉えた各社が取り組む製品を紹介する。
シャープ 冷蔵庫で氷入り飲料
氷の粒入り飲料で熱中症を予防―。シャープは氷混じりの飲料「アイススラリー」を簡単に作れる冷蔵庫を開発した。スポーツドリンクなどのペットボトル飲料を冷やしておき、飲む直前に振ると細かい氷の粒が混ざった状態になる。溶けかけたシャーベットのような喉越しが印象的だが、体の中心部分の体温を短時間で下げられる利点がある。
冷蔵庫はマイナス7度C前後で飲料を冷やす。凍り始める温度以下になっても液体の状態を保つ「過冷却」という現象を利用しており、衝撃を与えることで液体中に氷の粒を生成する仕組みだ。
製品化を目指し、今夏から建設会社やスポーツクラブで実証している。アイススラリーを作れる冷蔵庫はコンビニエンスストア向けの業務用が既にあるが「市販の冷蔵庫に近いタイプは一般的ではない」(シャープ)。宅配便で現場に送り、大人数の飲み物を一度に冷やす使い方を想定しており、早期の市場投入に期待がかかる。
ライソン 5分で“キンキンビール”
氷点下に冷えたビールを今すぐ飲みたい。そんな要求に応えるのが、ライソン(大阪府東大阪市)の「至高の缶クーラー“KINKIN COLD”」。装置に氷と塩を入れ、飲料缶をくるくると電動で回す。常温から3分後に1・5度C、5分後にマイナス1度Cという“キンキンに冷えた”飲み物を楽しめる。消費税込みの参考小売価格は3300円。
ライソンはカップ焼きそば専用ホットプレートや金利を学べる貯金箱など、独創的な製品を手がける中小メーカー。「飲食店で人気の非常に冷たい飲み物を、家でも飲めるものを作りたい」(ライソン)という視点が開発のきっかけだ。
小売店や電子商取引(EC)サイトで3カ月以内に売り切ることを想定し、5月に発売したが、2倍以上の速さで完売した。「暑さが急上昇した時期から問い合わせが増えた」(同)という。年内にも「飲料に一工夫できる新製品の発売を目指している」といい、消費者の心を掴むモノづくりに磨きをかける。
山善 外気入れない水冷服
山善は冷やした水を小型電動ポンプとウエア内側のチューブで循環し身体を冷やす水冷服「ダイレクトクール」を発売した。工場などの作業現場では、電動ファンが外気を取り込んで身体を冷やす服が定着しているが、暑さが厳しい場所では熱風を取り込んでしまう課題があった。外気を取り込まない水冷服は火を取り扱う現場や倉庫のほか、アウトドアや野外フェスなどでも活躍する。
水を入れ凍らせた付属の薄型ボトルや市販の凍ったペットボトル水などを使い循環水を冷やす。電源は市販の5ボルト、2―3アンペアのモバイルバッテリーを使用可能。連続運転で約20時間、ロングモードで約48時間以上利用できる。
機能によって3仕様を展開。4月に新発売したプレミアム仕様は首元と脇下にもチューブを通し、冷却効果を高めたが、すでに完売した。プロ仕様の販売数は2023年度比5%増で推移している。消費税込みの実勢価格は1万6800円前後。
ミズノ 動きやすい冷感パンツ
ミズノは青山商事と共同企画し、夏場でも快適に着用できる接触冷感パンツ「ミズノアイスタッチムーブパンツ」を発売し、売れ行きも好調だという。スポーツとビジネスウエアの技術を組み合わせた。
ミズノアイスタッチムーブパンツは、ミズノ独自の熱伝導率の高い糸「アイスタッチ」を、パンツアイテムに初めて採用した。肌から汗が蒸発する際の気化熱を奪いやすく、着用時に清涼感を得られる。吸汗性能にも優れるため、長時間の座り仕事でも蒸れにくい。
また、縦方向に約30%、横方向に約25%伸び、スポーツウエア並みのストレッチ性もある。ミズノのスポーツウエア製造の中で培った、運動時の動きやすさを追求したウエア設計「ダイナモーションフィット」も採用。動きやすさを実現した。
消費税込みの価格は1万890円。「洋服の青山」全店と洋服の青山オンラインストアで販売している。
パナソニック 空調ノズル、体感3度C低下
パナソニックはスポット空調に取り付けるだけで、体感温度を最大約3度C下げられる製品「ジェットノズル」を販売する。吹き出し口の周囲を多重構造にして、周囲の温かい空気を巻き込みにくい。風速も落ちにくく涼しい風を送り込む。工場や自動車整備場などに展開。価格はオープンだが、大手電子商取引(EC)サイトは消費税抜きで1個2万1900円で販売する。
「暑ければ暑いほど効果を発揮する」とパナソニック社内分社の空質空調社は説明。設置工事が不要で、フレキホースやスポットクーラー先端に取り付けるだけで使える手軽さも特徴だ。空調の温度を必要以上に下げずに済み省エネにもなる。
23年に発売し24年は4000個の販売を目指す。7月までに1800個以上を出荷済みで「計画通りに販売中」(パナソニック)だ。
8月から韓国・香港での販売も始め、タイやベトナムでも展開予定。吹き出し口の開閉機構など、足元では改良も進めている。<
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