エアコン工場フル稼働…ダイキン・三菱電機・パナ、自動化・新技術で生産改善に余念なし
夏到来でエアコン工場がフル稼働している。30度Cを超える猛暑が続き家庭用エアコンの需要が旺盛だ。家電量販店で熾烈(しれつ)な販売競争が繰り広げられる裏では、空調メーカーの工場が生産を加速している。大手は新技術の開発や自動化にも余念がない。ダイキン工業は火炎を使わないロウ付けの新設備を開発し、三菱電機は室内機の熱交換器のガス漏れ検査を自動化した。各社の現場では生産改善の熱が高まっている。(大阪・森下晃行)
ダイキンは国内工場で新技術やベースモデルを開発し、海外工場に展開する生産体制を敷く。象徴的な取り組みの一つが、滋賀製作所(滋賀県草津市)で実証中の「火炎レス」のロウ付け設備だ。
エアコンの熱交換器には熱伝導率の高い銅を使うことが一般的だが、原価低減のためダイキンはアルミニウムに材料の置換を進めている。ただ、アルミは銅よりロウ付けの作業温度と融点が近く、母材が溶けやすいため加工が難しいという課題があった。
ダイキンは既に室内機の熱交換器のロウ付けにロボットを導入していたが、足元では複数の配管を同時に加熱する熱風ノズルも開発した。予熱の仕方を工夫し、複数の配管を火炎を使わずにロウ付けする仕組みだ。必要な設備を従来に比べ減らせるメリットがある。
「アルミは加工が難しい。新技術を入れないと加工費が下がらない」とダイキンの森田重樹空調生産本部長は取り組みの意義を説明する。火炎レスのロウ付け設備は今後、中国などの工場への展開を検討しており、設備投資の半減を目指す。
生産改善は他社でも進む。三菱電機の静岡製作所(静岡市駿河区)では家庭用エアコン室内機の熱交換器製造ラインで、ガス漏れ検査を自動化した。加えて「IoT(モノのインターネット)も積極的に導入している」と三菱電機静岡製作所の小野達生所長は明かす。
パナソニックは草津工場(滋賀県草津市)で配線の引き回しやコネクターの結線などを自動化した。各取り組みで「対象機種では150%(50%増)程度の生産性向上を見込んでいる」(パナソニック社内分社の空質空調社)という。
他方、エアコン製造では部材の組み立てなど人の手による作業も多い。作業者の負担軽減が重要な課題だ。
ダイキンは人の作業映像から3次元の骨格モデルを算出し、作業姿勢を数値にする取り組みを始めた。作業のしづらさを数値で分析し改善につなげる。
三菱電機は製品ごとに必要な部材をあらかじめ準備し、効率的に組み立てる「キット生産方式」を導入している。フォークリフトと人の導線をきちんと分けるなどの方法でも改善に取り組む。
日本冷凍空調工業会によると国内の家庭用エアコンの出荷台数は2020年度の約1010万台をピークに微減傾向だが、24年度は省エネルギー・節電意識の高まりなどで「23年度同等の底堅い需要を見込む」(三菱電機)。家庭用エアコンの需要が“冷え込む”可能性は薄そうだ。
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