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米スペースXのロケットで「衛星」今秋宇宙へ、福井の産学官の試金石

米スペースXのロケットで「衛星」今秋宇宙へ、福井の産学官の試金石

超小型衛星「TIRSAT」

福井県内の産学官などで構成するグループは、秋ごろに米国で米スペースXのロケットを利用して人工衛星を打ち上げる。同社の打ち上げ実績の多さや費用の低さなどを評価し、選定した。グループは福井の産学官が主体となって人工衛星運用体制の構築を目指しており、今回の衛星打ち上げはその一環。宇宙産業を県の新たな基幹産業にするために活動する福井の産学官の今後を占うプロジェクトとして、成否が注目される。

グループはセーレンや福井テレビジョン放送(福井市)、福井大学、福井工業大学が主体。従来、実績のなかった打ち上げ後の衛星制御や、衛星から送られた画像などのデータ処理、活用を県内の産学官のみで請け負える体制構築を目指している。「ふくい衛星運用ネットワーク構築プロジェクト(FUSIONプロジェクト)」と名付け、新たに開発した衛星を10―11月に打ち上げる予定だ。

セーレンは衛星製造技術を持ち、2月に打ち上がった大型基幹ロケット「H3」2号機には、同社が手がけた質量約5キログラムの超小型衛星「TIRSAT(ティー・アイ・アール・サット)」が搭載された。今回のプロジェクトでも、セーレンなどが衛星運用技術取得衛星を開発する。

衛星打ち上げには、米起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXの2段式ロケット「ファルコン9」を利用する。同社が世界のロケット打ち上げ実績の5割近くを占めることを評価した。

ファルコン9の打ち上げコストの低さも評価した。主要部品の一つである1段目のブースターを回収、再利用できるため、機体の製造コストを低減し、1回の打ち上げ費用は6975万ドル(約110億円)と他のロケットより安いという。国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運搬する輸送機や人工衛星の打ち上げにも使われている。

福井県は宇宙産業をメガネや繊維に並ぶ、県の新たな基幹産業へ育てるため、2015年ごろから宇宙産業の振興を始めた。

日刊工業新聞 2024年7月25日

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