ニュースイッチ

「教示なし」実現へ…経産省と産総研、ロボ動作生成AI開発

「教示なし」実現へ…経産省と産総研、ロボ動作生成AI開発

AI基盤により、教示しなくても最適なつかみ方ができるロボットが実現へ(「2023国際ロボット展」に出展した川崎重工業のサービスロボット)

経済産業省と産業技術総合研究所はロボット動作の制御データを生成できる人工知能(AI)基盤の開発を始めた。画像、音、3次元(3D)データといった物理データを学習させた基盤モデルを構築し、これら複数のモデルや大規模言語モデル(LLM)を組み合わせて動作計画を生成し動作を制御する。例えば教示しなくてもモノの種類に合わせて最適なつかみ方ができるロボットの実現が見込める。教示工程の短縮や、幅広い業種での生産性向上につなげる。

2024年度から3年間の事業で、初年度は学習データの整備や初期の基盤モデル開発を進める。学習データには公開されているものや、産総研が独自開発したデータ生成AIによるデータなどを活用する。実データ収集に向けた産総研のロボットチームや企業との連携、大学などとの共同モデル開発なども検討する。

画像、音、3D点群データといったそれぞれの基盤モデルを作成。LLMなども合わせて各モデルを連携させ、異なる種類の基盤モデルを一つのAIで扱える「マルチモーダル型動作生成モデル」により動作計画を作り、ロボット制御につなげるシステムの構築を目指す。実環境のデータを活用した基盤モデル開発は、世界的にも事例が少ないという。

各基盤モデルやマルチモーダル連携技術、学習手法といった要素技術について、順次実用化を進める。最終的には、これまで学習していなかった動作もできるようなロボットの実用化を想定する。将来は、できた動作生成モデルを製造業や運輸・輸送、医療・ヘルスケアなど個別産業で利用できるような応用モデルにして実装することを視野に入れる。

通常、ロボットは、させたい動作を教示して動かす。機械学習による動作生成も可能だが、教示や学習には膨大なデータ量と時間が必要で、想定外の動作への対応が限られるといった課題がある。

日刊工業新聞 2024年7月24日

編集部のおすすめ