全固体熱トランジスタの制御幅3.5倍…北大、廃熱の高度利用提案
北海道大学の卞志平大学院生と太田裕道教授、大阪大学の李好博助教らは、熱の伝わりやすさを電気的に切り替えられる全固体熱トランジスタの制御幅を拡大した。1メートルケルビン当たり1・7―6・0ワットと制御幅が3・5倍になった。熱トランジスタの大規模化を進め、廃熱の熱流制御などに提案していく。
ランタン・ニッケル酸化物を280度Cで電気化学的に酸化還元して熱伝導率を切りかえる。空気中の酸素を結晶中に出し入れするため安定して動作させられる。従来は水素やリチウムを用いる材料が報告されてきたが扱いが難しかった。
実験では膜厚80ナノメートル(ナノは10億分の1)のランタン・ニッケル酸化物薄膜を電気化学的に酸化還元して熱伝導率を制御した。0・01ミリアンペアの電流を流すと数分でオンオフが切り替わる。制御幅は3・5倍になった。
300度C程度の廃熱の高度利用などに提案する。廃熱は熱源の出力が変動するため精密な温度管理が簡単ではない。熱トランジスタで熱伝導率の面分布を作れば高度な制御も可能になる。
日刊工業新聞 2024年7月4日