異業種連携300社目指す…NTT東日本が立ち上げた「睡眠テック」事業の展望
NTT東日本がIT技術の活用や異業種との協業で睡眠の質を改善するスリープテック事業を立ち上げた。2018年の日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、世界で最も短いとされる。コロナ禍で進んだデジタル化による生活の夜型化も睡眠時間をさらに削ったとされる。NTT東が通信インフラの運用を通じて培ったデータ解析技術や地域社会とのつながりを活かし、生活を支えるインフラである睡眠課題の解消を目指す。
「当社が運営する睡眠関連企業のコミュニティー『ZAKONE(ザコネ)』の参加企業が3月に118社に達した」。NTT東ビジネスイノベーション本部スリープテック事業チームの尾形哲平ZAKONEディレクターは、国内スリープテック市場の裾野拡大への手応えを示す。
活動の一翼を担うのが睡眠と音楽の融合だ。23年3月には吉池旅館(神奈川県箱根町)で、寝落ちするための演奏会「ZZZN(ズズズン)リッスン・アンド・スリープ」を開いた。参加者は布団の中に入ってアーティスト3人の生演奏を視聴。参加者に配ったセンサーで布団の中の姿勢や温度を計測した。このデータを基に照明の明るさや点滅のスピードを変化させ、心地よく寝落ちしてもらう環境を作り出した。
24年3月には睡眠と音楽の可能性を探求するレーベル「スリープ・サウンド・レーベル・ZZZN」を設立した。睡眠をテーマにした音楽を制作・募集し、寝る前のひと時や落ち着くための時間など「睡眠」にまつわるさまざまなシチュエーションに寄り添う楽曲制作や空間作りを目指す。尾形ディレクターは「睡眠と音楽のかけ算に非常に大きな可能性がある。双方向で市場を拡張できる」と期待する。
第1弾として、Chara(チャラ)さんら複数のアーティストが考える睡眠をモチーフにした楽曲6曲を収録した「ZZZN EP Vol.1」を制作した。今後は新たなアーティスト、プロデューサーらによる楽曲の追加配信、各地域や企業向けの睡眠をテーマにした音楽イベントを実施。宿泊施設の環境に特化したBGMの制作・配信や、音に没入できるコンセプトルームの企画・設計なども手がける。
尾形ディレクターは「睡眠における音源の効果検証、睡眠をテーマにした音楽体験のコンサルティングも行う」と意気込む。25年度までにZAKONE参画企業を300社に増やし、異業種企業の連携による新たな価値を生み出す。(編集委員・水嶋真人)