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洋上風力支援・アンモニア運搬船を保有…三井物産が船舶流通市場を深耕する狙い

洋上風力支援・アンモニア運搬船を保有…三井物産が船舶流通市場を深耕する狙い

三井物産はLNG運搬船などに投資するファンドへの出資参画を決めた

三井物産は脱炭素に向けて取引が活発化する船舶流通市場を深耕する。デンマークの船舶投資会社ナビガー・キャピタル・パートナーズ(NCP)のファンドへの出資を通じ、洋上風力のメンテナンス支援船やアンモニア運搬船などを保有・リースする事業に参画する。海外の船主・運航会社などとのネットワーク拡充につなげて、国際海運のニーズに応える船舶の供給基盤を構築する。(編集委員・田中明夫)

三井物産は投資子会社の三井物産オルタナティブインベストメンツと共同で、NCPが組成する予定総額約15億ドル(約2300億円)の船舶投資ファンドへの出資を決めた。国内の機関投資家を束ねて中間会社を通じ出資することで、資金にボリュームを持たせてファンド運営に参画するほか、三井物産グループからNCPに1人出向して関係を強化する。三井物産は出資額を明らかにしていない。

NCPは世界最大級のデンマーク海運会社A・P・モラーマースクのロバート・マースク・ウグラ会長が設立し、これまで二つの船舶投資ファンドの組成実績がある。三井物産はA・P・モラーマースクとのタンカー保有事業などでの協業経験を生かし、初めて投資運用判断への参画権を持つ形で船舶ファンド出資を果たした。

今回の3号ファンドが投資する洋上風力発電のメンテナンス向け船舶は、波の荒い海上で船体を安定的に保ち風車の保守作業を支える高度な機能を持つ。世界的な洋上風力開発の加速に伴うメンテナンス船の利用ニーズを取り込む。

またアンモニアや液化天然ガス(LNG)など脱炭素・低炭素向け需要が想定される燃料の運搬船のほか、コンテナ船やバラ積み船などにも広く投資する。中古船を含む船舶の国際取引市場は環境対応の高まりを背景に活性化が見込まれており、三井物産海洋エネルギーソリューション室の江尻宗也氏は「ファンド投資を通じてネットワークを拡充し、船舶大手と組む足がかりにしたい」と語る。

今回、海外船舶ファンドへの出資機会が乏しい国内機関投資家を巻き込んだことで「国内金融市場の健全な発展にも寄与する」(三井物産オルタナティブインベストメンツの兼子佳之戦略事業部長)とする。国際海運市場と国内金融業界のつながりを作り、中長期の船舶投資の活発化も後押しする。

大手商社では脱炭素ニーズの高まりを受け、船舶事業を拡充する動きが広がっている。住友商事は洋上風力発電の建設支援船を運航するノルウェーのIWSフリートに対し、6000万ユーロ(約102億円)の出資を決定。伊藤忠商事はシンガポールなど国際海運の要衝で船舶向け燃料アンモニアの供給拠点整備を進めるなど、産業ネットワークを生かして攻勢をかけている。

日刊工業新聞 2024年06月07日

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