初の木造衛星…京大と住友林業が世界で初めて完成した意義
京都大学と住友林業は28日、木造人工衛星「リグノサット」が完成したと発表した。木造の宇宙機は世界初で、宇宙開発で木材が使用できるかを検証する。6月4日にも宇宙航空研究開発機構(JAXA)へ実機を引き渡し、9月に米スペースXのロケットで国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げる。10月に日本実験棟「きぼう」から放出後、運用を始める。運用中に取得したデータを基に、宇宙開発での木材利用の拡大を目指す。
リグノサットは木造構体の歪みや衛星内部の温度・地磁気測定、宇宙放射線の影響を調べるといった宇宙空間での木材利用性を解析し、アマチュア地上局と連携した衛星と地上との通信を実施する。10月に運用を開始し、2025年春に終了する予定。京大の土井隆雄特定教授は「誰も作ったことがない衛星を作れた。今後は2号機、3号機と大型化して実証していきたい」と意気込みを語った。
縦10センチ×横10センチ×高さ11センチメートル、重量1キログラムという手のひらに乗るくらいの大きさの超小型衛星。木製だと大気圏再突入時に完全燃焼して水蒸気と二酸化炭素(CO2)のみを生成するため、従来に比べて燃焼時に発生する微粒子が少なく、地球の気候や通信に悪影響を及ぼしにくい。また高周波電磁波を透過するためアンテナを内蔵でき、アルミニウムと同等の磁気透過性を持つため磁気を使う駆動装置が使えるという利点がある。木材を使った新たな宇宙機が実証できれば、宇宙開発も脱炭素社会の実現に貢献できると期待される。
日刊工業新聞 2024年5月29日