日本製鉄・神戸製鋼は事業減益…高炉の通期見通し、鋼材市況停滞
高炉系鉄鋼3社の2025年3月期連結業績予想が9日、出そろった。各社ともに鋼材市況の停滞が継続すると想定し、本業のもうけを示す事業利益は日本製鉄と神戸製鋼所が減益、JFEホールディングス(HD)が微増益を見込む。各社は厳しい事業環境の中で価格改善やコスト削減などを進めるとともに、海外事業拡大といった成長戦略を加速する。量から質への転換を確実にする。
「未曾有の厳しい事業環境を前提に、26年3月期に向けてどのように取り組むかが重要だ」。日本製鉄の今井正社長は9日の決算会見で、25年3月期の事業戦略についてこう強調した。
日鉄が公表した25年3月期の連結業績予想は鋼材市況の悪化などが影響し、事業利益は同25・3%減の6500億円を見込む。このうち、在庫評価差などを除く実力ベースでは7500億円の確保を目指す。25年3月期は現在進行中の構造改革の端境期と位置付ける。適正マージン(利ざや)の追求など収益改善を着実に進め、26年3月期以降の布石にする。
神戸製鋼所は電力事業の一過性影響の剥落や固定費を中心としたコスト増加などで、25年3月期連結業績予想の経常利益を同6・8%減の1500億円と見込む。一方、JFEHDは構造改革の成果や高付加価値品の販売比率の増加などにより、25年3月期の事業利益を0・6%増の3000億円と想定する。
25年3月期は量から質への転換を確実にするための節目の年になる。海外事業強化に向け、日本製鉄は米USスチールの買収を12月までに完了させる計画。森高弘副会長は「これ以上の政治化は考えにくい。大統領選が終わってからのほうが落ち着いた議論ができる可能性がある」とした。JFEHDは脱炭素に寄与する「カーボンリサイクル高炉」の開発を加速する。
日刊工業新聞 2024年05月10日