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「自山鉱」比率4割に拡大、日鉄が海外投資で安定調達

日本製鉄は原料の安定調達やコスト抑制に向け、石炭や鉄鉱石を出資鉱山から調達する「自山鉱」比率を現状の2―3割から将来的に4割程度に拡大する方針を明らかにした。JFEスチールも新たな石炭権益について情報収集しており、約1割の自山鉱比率のあり方を検討する。世界的な脱炭素化に伴い石炭開発が停滞するなど、原料需給の逼迫や価格上昇のリスクが顕在化しており、自山鉱比率の引き上げなどで影響を緩和する。

日鉄の2022年度の国内製鉄事業における自山鉱比率は鉄鉱石、石炭ともに約2割だった。ただ24年1月にカナダの優良原料炭会社「エルクバレーリソーシズ(EVR)」に約20%出資したことで、石炭の同比率は約3割に高まる見通しだ。

EVRへの投資は約2000億円に上るが、今後も有望案件があれば投資を継続して同比率を「4割程度にしたい」(森高弘副社長)と説明する。同比率4割については「当社の鋼材に占める店売り汎用品の割合でもある。原料市況変動の影響を直接受ける領域で、大口顧客向けのひも付き品よりマージン(利ざや)の確保が難しい」(同)という。自山鉱比率を4割程度に高めることで変動影響の回避を図る意向だ。

近年、日鉄は競争力強化に向け、川上工程の原料調達から川中工程の生産、川下工程の流通まで縦軸の事業構造を志向している。外部環境に左右されない「厚みを持つ連結収益構造の実現」を目標に掲げて推進しており、原料調達面でこの取り組みを加速する。

一方、自山鉱比率が約1割のJFEスチールは石炭権益への投資案件で情報収集している。JFEホールディングスの寺畑雅史副社長は「出物(の案件)があれば(参画のあり方を)考えていく」との方針を示す。足元では海外の鉄鋼大手が原料の安定調達に向けて争奪戦を展開している。限られたオフテイク(引き取り)権のままで、今後も調達可能かどうか懸念が出ている。

脱炭素化の潮流を受け、石炭開発事業者が新規投資を抑制し、価格の高止まりや調達の難しさが課題になっている。鉄鋼各社は市況影響の回避やコスト抑制のため、調達ソースの多様化に力を注いでいる。寺畑副社長は「電炉の活用も進めるが、電炉だけでは世界で伸びる鋼材需要に対応できない。高炉法で脱炭素化を進めつつ、石炭をうまく使い続ける必要がある」との認識を示す。

日刊工業新聞 2024年03月15日

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