半世紀超のデータ学習へ…材料特性・寿命を予測するAI、物材機構が開発
物質・材料研究機構(物材機構)は構造材料の電子顕微鏡画像から材料の特性や寿命を予測できる人工知能(AI)の開発に着手した。半世紀以上蓄積してきた材料の信頼性評価データをAIが学習できるよう整備する。同画像と寿命データなどを組み合わせることで予測できるようになる。材料や装置、インフラ構造物などの信頼性評価の高度化につなげる。
生成AIを活用して構造材料の微細組織の画像を生成する。AIには破断強度などの材料特性と、クリープ試験の温度や負荷などの試験条件、材料組織や破断面などの画像を学習させる。すると要求特性や使用条件に応じた組織画像を生成できるようになる。新材料の組織画像とAIで照らし合わせ、特性や寿命を予測できるようになる。材料開発の効率化につながる。
物材機構は最長で35万時間超(約41年)のクリープ試験データを提供している。クリープ試験に加えて疲労や腐食、宇宙関連材料など、国の研究機関として材料の信頼性を評価してきた。ただ活動が半世紀にわたるため、データが紙資料として残されていた。このデータをデジタル化する。
微細組織の画像は、含まれる情報が多く、解釈の幅が広い。粒界に析出した微少相の形や分散性から耐久性を説明するなど、専門分野や研究者ごとに意見が異なることもある。これをAIで定量的に検証できるようになった。
併せて物材機構の研究史や研究者情報などをウェブで公開して学習を促す。世界では研究用AIの開発が進められているが、信頼できるデータが限られていた。試験データと研究背景の両面から信頼できるAIの開発環境を整えていく。
日刊工業新聞 2024年5月2日