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TMR素子で15年ぶり世界記録、物材機構が達成した意義

物質・材料研究機構(NIMS)のトーマス・シャイケNIMS特別研究員と介川裕章グループリーダーらは、631%の磁気抵抗変化比率を持つトンネル磁気抵抗(TMR)素子を開発した。15年ぶりに世界記録を更新した。TMR素子は磁場によって素子の電気抵抗が変化する。磁気センサーや磁気抵抗メモリー(MRAM)の高度化につながる。

TMR素子は磁性層の間に絶縁層を挟み、上下の磁化方向を入れ替えて抵抗を変化させる。今回、磁性層と絶縁層を単結晶材料で構成した。

磁性層のコバルト鉄合金はスパッタリング、絶縁層の酸化マグネシウムは電子線蒸着法で成膜した。絶縁層の下界面には厚さ0・6ナノメートル(ナノは10億分の1)の金属マグネシウム層を挿入し、上界面は酸素を吹きつけ酸化させた。こうして絶縁層の元素が磁性層に侵入することを防いだ。

すると抵抗が室温で631%変化した。マイナス263度Cでは1143%の変化比率を示した。室温の最高記録は604%、実用素子は200%以下にとどまっていた。大きな変化率を確保できると、磁気センサーの高感度化やMRAMの多値化が可能になる。

日刊工業新聞 2023年04月20日

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