NTT法見直し…松井ソフトバンク執行役員、近視眼的な視点に危機感
電気通信事業法など 廃止ケースの対応懸念
ソフトバンクの松井敏彦執行役員渉外本部長はNTT法見直しについて、NTTと競合事業者の双方が意見交換できる形でのオープンな議論を求めた。自民党は2025年をめどにNTT法廃止を目指す提言をまとめたが、国民の負担で建設した通信局舎などNTTが持つ“特別な資産”のあり方に関する結論は出していない。松井氏はこれらが唯一無二の国家基盤であり「国家存続に関わる問題だ」として慎重な議論を尽くすよう要望した。(編集委員・水嶋真人)
「言いたいことを言うだけの一方通行の議論では、会話という形にならない」。松井氏は自社やKDDI、楽天モバイルがオープンな議論を求める要因の一つをこう説明する。
総務省日開いたNTT法見直しの論点を整理する特別委員会では有識者の前でNTTと競合3社のトップが自社の見解を説明した。だが、4社トップに与えられた時間は1社当たり約10分。有識者の質問に各社トップが答える一幕はあったが、事業者間の意見交換の時間はなかった。
唯一、有識者の質問に「25年にNTT法を廃止すると私どもが言っているわけではない」と島田明NTT社長が答えたことで高橋誠KDDI社長が発言を求める場面があった。松井氏は、こうしたトップ同士の意見交換の重要性を指摘し、「25年と期間を区切らずに何度も腹を割って話し合い、落とし所があるのかないのか議論するべきだ」とする。
競合3社が腹を割った議論を求める背景には、20年に総務省の審議会を経ずにNTTがNTTドコモを完全子会社化した不信感がある。「(NTT法廃止で)“大NTT”が復活し、公正競争が一気に崩壊する恐れがある」(三木谷浩史楽天モバイル会長)という意見に対し、NTTはNTT東日本、NTT西日本とNTTドコモの合併禁止を電気通信事業法に記載しても良いとの見解を示す。
一方、松井氏はNTTの業務範囲を規制するNTT法を廃止し、公共福祉のために電気通信業の営業の自由を制限する電気通信事業法で代替した場合、「持ち株会社のNTTが仮に電気通信業をやらなくなった際に電気通信事業法で対応できるのか」と主張。NTT東西やドコモの事業の一部を他のグループ会社に切り出して一時的にシェアを下げ、同法の対象から外れた場合も含め、「懸念事項を一つひとつつぶしていくべきだ」とする。
NTT法を廃止した場合、NTTが仮に次世代事業の成長のために特別な資産を担保に出したり国内通信のユニバーサル(全国一律)サービスを破棄したりしようとした時に、電気通信事業法や外為法だけで対応できるのかという懸念もある。
松井氏は「こうなった場合、日本の通信市場環境や料金が良い方向に向かわなくなる。(NTTの国際競争力強化など)近視眼的な視点だけの議論に危機感を抱いている」として、外資規制のあり方も含めた慎重な議論への理解を求めた。