通信設備“国民の資産”…岸田KDDI執行役員「NTT法、特殊性考慮を」
株総量規制も維持必要
KDDIの岸田隆司執行役員渉外・広報本部長はNTT法見直しについて、国民負担で構築した通信局舎約7000棟や通信ケーブルなど“特別な資産”を持つNTTの特殊性を考慮した規制をNTT法で維持する重要性を強調した。国内通信事業者のインターネット回線や携帯通信網は、特別な資産を用いた光ファイバー網を使う。岸田氏は「この重要性を前提に議論を進めるべきだ」と要望した。(編集委員・水嶋真人)
「(NTT東日本、NTT西日本の固定電話回線を利用できる権利である)電話加入権という国民負担を基に特別な資産を作ったことを忘れてはならない」―。岸田氏は通信局舎のほか、通信ケーブルを通す地下パイプ(管路)62万キロメートル、電柱1186万本などのNTT東西の施設を特別な資産とする理由をこう説明する。
NTT民営化時の1985年の電話加入権の価格(施設負担設置金)は7万2000円だった。05年に3万6000円(消費税抜き)に減額。携帯電話の普及で現在は資産価値がほぼなくなったが、NTT東西は電話加入権を通じた国民からの負託を受けて固定電話網に欠かせない管路や電柱を全国に建設した。
岸田氏は「この特別な資産を基に引いた光ファイバー網が全国の通信事業者の携帯通信・光回線サービスの基盤になっている」と指摘する。携帯通信各社の利用者のスマートフォンからの電波を受け取った基地局は光信号などに変換して光ファイバー網を用いて中継局に送信するからだ。
NTTは日本電信電話公社(電電公社)から承継した資産について「民間を含む各株主に帰属する」との見解を示す。だが、岸田氏は「これらの特別な資産はNTT東西で管理している。国民の負託を受けている以上、安定的に提供する責務がある」と主張する。
NTT法第3条では電話の役務のあまねく提供(ユニバーサルサービス)に関する責務をNTTに課している。一方で22年に電気通信事業法が改正され、固定電話のほか、ブロードバンドもユニバーサルサービスを担うこととされた。岸田氏は「電話の役務のあまねく提供という文面が時代の流れに合っていない」とした上で「電話・光サービスをNTTグループがあまねく担うという文面に見直したほうが良い」とする。
NTTは携帯電話や衛星通信をユニバーサルサービスとし、時代に合った形で効率的な提供を提案している。岸田氏は「論理のすり替えになってはいけない。NTT法で定めたNTTの責務は今後も担っていただかないといけない」と強調する。
KDDIは研究成果の開示義務など国際競争力強化に向けた見直しには一定の理解を示している。ただ、「特別な資産を持っているのだからNTT法の廃止はあり得ない」(岸田氏)。NTTが管理する国民にとって大切な特別な資産を担保するためにも、政府によるNTT株式の3分の1以上の保有、外国人等の議決権割合を3分の1未満とする総量規制もNTT法で維持していくべきだとの認識を示した。