「スシロー」展開のF&LC、すしネタ安定調達へ協業強化
給餌・交配を効率化
回転すしチェーン「スシロー」などを展開するFOOD&LIFE COMPANIES(F&LC)は、水産資源の安定調達を目指し、他社との協業に力を入れている。マダイの養殖では養殖事業者などと協力して生産したマダイを春以降に店舗で提供を始める計画。ハマチ(ブリ)ではベンチャー企業と協力し、全遺伝情報(ゲノム)解析を本格的に開始した。将来はゲノム解析したハマチを従来通り人工交配して、育てたものを店舗で提供することも目指している。(大阪・岩崎左恵)
海水温度の上昇などで天然魚の漁獲量が少なくなる中、F&LCでは水産資源の安定調達を狙い、養殖魚の仕入れの割合を現状の約35%から50%に伸ばすことを目標としている。養殖魚の重要性は高いが、養殖事業者は高齢化や人手不足などで増加は見込めない。斎藤雄介商品戦略部長は、「安定調達ができるよう、自社で丸抱えするのではなく、技術を持ったパートナーと連携する」と他社との協業に意欲を見せる。
水産資源を安定かつ持続的に確保する取り組みの一つとして、種苗生産・人工交配技術などを持つ養殖事業者の拓洋(熊本市東区)と共同出資会社「マリンバース」(同)を設立。卵をふ化させて育てた稚魚を利用する種苗生産や飼料の販売などを手がける。マダイの養殖では、人手で選別した親魚を用いて生産した種苗を、マダイの養殖専門業者に販売している。養殖事業者と真鯛の給餌量データなどをやりとりし、養殖の効率化にも取り組む。
養殖事業者と協力して育てたマダイは春以降にスシローなどの店頭で提供する計画。斎藤商品戦略部長は「協力する養殖事業者とは引き続き連携を強化し、今後も議論していく」との考え。養殖魚の種苗生産や養殖の効率化にも関わり、養殖魚調達の新しいモデル作りに意欲を見せる。
また、マリンバースではゲノム解析技術を持つプラチナバイオ(広島県東広島市)とも協業。従来、親魚の選別では「活(い)きが良い」「大きい」と、人手で種苗生産していたが、2023年からは遺伝子情報を操作しないゲノム解析で遺伝子的に優れた親を選ぶ種苗生産の取り組みに着手した。今後、ゲノム解析で自然適応能力が高いと分かったハマチ(ブリ)を人間が交配して種苗を生産していく考え。種苗生産後の親魚も再びゲノム解析をして「継続的に研究開発を進める」(斎藤商品戦略部長)としており、優秀な種苗の開発を進め、水産資源の安定調達につなげる。