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社員の絆を強め次世代人材獲得、京セラの試行錯誤の現在地

社員の絆を強め次世代人材獲得、京セラの試行錯誤の現在地

京セラ東京事業所のコワーキングスペース

企業の使命は会社が将来にわたって継続すること。そのため多くの企業が競争力のある技術や製品の開発、社員の連携強化、優秀な人材獲得など事業活動の継続に欠かせない取り組みに力を注ぐ。京セラも同様で、2023年に開所した東京事業所(東京都港区)に同社だけでなくグループ企業も入居し、社員同士の絆を強めたり、優秀な人材を獲得したりする施策が日夜、試行錯誤されている。(京都・小野太雅)

東京都港区のJR田町駅近くにある東京事業所は東京都心部に分散していた京セラと八つのグループ会社の事業拠点を統合し、業務の効率化だけでなく「コロナ禍で減った社員同士の交流が再起動する」(大西実東京事業所所長)ことも狙いとしている。

23年11月には若手中心にオフィスの使い方や交流イベントを考える「ファシリティ委員会」を発足。「フリーアドレスと言いつつ席が固定化していることの対策」「コワーキングフロアの活用促進策」など、新拠点の使い道を議論している。以前のオフィスとの比較を見るため、24年2月には東京在籍の社員に対し「ファシリティ満足度調査」を実施。その回答と照らし合わせ、改善を重ねている。

また、事業所内のコワーキングフロアにはビールサーバーを置いて、社員が親睦を深めるコンパをしばしば開催しているという。

同社が社員同士の交流に注力する背景には、京セラ創業者の故・稲盛和夫氏が経営の方針としてきた、社員同士が家族のように相互で助け合い成長する「大家族主義」がある。大西所長は「(交流を通じ)部門にかかわらず、従業員同士が顔なじみになれば、困ったときや新しい取り組みを始めるとき、互いに声をかけやすくなる。それが新事業創出などのシナジーを産む」と力を込める。

東京事業所は採用などでも活用する。既に短期インターンシップ会場として利用したほか、4月以降は選考会場とし、オフィスツアーなども実施予定。大西所長は採用活動における京セラの知名度について「関西と比べ、関東地域での知名度はまだ弱い」と分析。東京事業所を見た学生が「こんなすてきな所でかっこよく働きたいと思ってもらえるようにする」と意気込む。

東京都心部の事業拠点から、持続的な成長に欠かせない社員同士の絆や次世代社員を創出しようとしている。

日刊工業新聞 2024年04月12日

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