京セラが「衛星向け水晶発振器」で新工場、宇宙分野を開拓
京セラは米国ペンシルベニア州に人工衛星向け水晶発振器の新工場を建設する。昨秋、米国の水晶部品メーカーから生産技術などの資産を取得しており、技術を活用して2025年3月にもハイエンドの水晶発振器を新工場で量産する。投資額は数十億円。過酷な環境でも安定的に機能するハイエンド部品を自社の品ぞろえに取り込み、航空宇宙分野を開拓する。
量産するのは、恒温槽付き水晶発振器(OXCO)。京セラは子会社を通じ、23年10月に米ブライリー・テクノロジーズの設備などの資産を買い取り、航空宇宙関連で使われるノイズの少ない水晶部品の技術を獲得した。ブライリーは低ノイズで低消費電力の技術を有しており、これらの技術や知的財産などを活用しハイエンド部品をつくる。ブライリーの売上高は15億円程度。
新工場は、京セラの米国の電子部品子会社「京セラAVXコンポーネンツ」がペンシルベニア州立大学エリー校内に整備する。延べ床面積は5300平方メートルで、4月に着工し11月に完成する予定。まずはブライリーの売り上げ規模と同水準の生産量で立ち上げ、生産能力を順次引き上げる。
OXCOは恒温槽によって温度を一定に保ち、周囲温度の変化による出力周波数の変化を少なくできるのが特徴だ。宇宙空間のような過酷な環境でも機能を維持できる。
水晶発振器は一定間隔で安定した周期の信号を発するタイミングデバイスの一種。電子回路が正常に機能するために必要な部品だ。同社は水晶デバイスの製品群を拡充しており、ラインアップになかった水晶発振器を追加することで、人工衛星など需要の拡大が期待される航空宇宙分野を深耕する。
米調査会社のリサーチネスターによると、水晶発振器の市場規模は36年までに23年比約2・6倍の85億ドル(1兆2750億円)に成長する見込みだ。