ATM製造ラインの編成効率7倍、富士通フロンテックが3Dシミュレーター導入
富士通フロンテック(東京都稲城市、渡部広史社長)は、新潟工場(新潟県燕市)に3次元(3D)シミュレーターを導入し、現金自動預払機(ATM)の製造ラインの編成効率を約7倍向上した。これにより加工費を15%低減する。データに基づく仮想検証で、生産量の変動に対応した最適なラインを編成する。今後は工場フロアのレイアウト検討や倉庫スペースのシミュレーションなどにも活用する。
新潟工場ではATMの組み立てなどを行っており、工程設計や作業者・設備の配置に3Dシミュレーターを活用する。具体的には新製品の生産などで新たに製造ラインを編成する際や、生産量の変動に伴いラインを組み替える際に用いる。仮想検証により、これまで約40営業日かかっていた新ラインの編成を約5日に短縮した。熟練者による経験値など人手に頼っていたため、ラインの組み替えに膨大な工数や時間がかかっていた。
3Dシミュレーターは、生産計画や作業者のスキルなどの基礎データを基に仮想検証する。作業順序や作業工数などこれまで蓄積したデータを生かすことで、高精度なシミュレーションを実現する。また作業者に手持ち無沙汰の時間が発生しないよう人員配置を最適化する。
新潟工場ではATM以外に、手のひら静脈認証や無線識別(RFID)タグなどを生産する。多品種変量生産への効率的な対応を検討してきた。静脈認証やRFIDタグは生産の自動化が進むが、主要生産品目のATMの組み立てでは人手に頼らざるを得ない。時期によって生産量の変動も大きいため、デジタル変革(DX)推進で生産効率を高める。
日刊工業新聞 2024年4月4日