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富士通・NEC・野村総研…生成AIブームで活況、DXコンサル覇権争いの行方

富士通・NEC・野村総研…生成AIブームで活況、DXコンサル覇権争いの行方

NECの吉崎執行役CDOは戦略コンサルを強化する方針を示す

顧客接点拡大、人材育成に注力

生成人工知能(AI)ブームを追い風にIT市場が活況だ。これを商機と捉え、IT・情報サービス各社はデジタル変革(DX)を提案するコンサルティングの強化でしのぎを削る。富士通は2025年度までにコンサルタントを1万人にする構想を掲げ、NECも戦略コンサルの強化を急ぐ。野村総合研究所(NRI)や電通国際情報サービス(ISID)はシンクタンク機能も含め、DXによる社会課題の解決で新展開を目指す。(編集委員・斉藤実)

IT・情報サービス各社は顧客との接点を従来のシステム部門から事業部門や経営層へと広げるべく、コンサルの強化を図っている。富士通の時田隆仁社長はコンサルタント1万人構想について、「当社は12万4000人の社員を抱え、コンサルとして活躍できるポテンシャルを持つ人材はスタッフ部門も含めたくさんいる。強い意志で1万人の達成を目指す」と力を込める。同社のコンサルタントは現在、約2000人。残り8000人はリスキリング(学び直し)などで育成し、必要に応じて外部にも人材を求める考えだ。

NECはグループ会社のアビームコンサルティング(東京都中央区)を持つが、これとは別枠で自社でもDXの構想策定などを担う戦略コンサルの強化に力を注ぐ。「25年度までに現行比2倍の1000人規模に拡大する」(吉崎敏文NEC執行役最高デジタル責任者〈CDO〉)。

森田隆之NEC社長は「生成AIの活用は我々が実験場としてノウハウを蓄積している」と語る。同社は軽量型の大規模基盤モデル(LLM)の日本語版を業界に先駆けて投入し、市場をリードする考え。戦略コンサルはその先導役となる。

生成AI活用前提で価値創造

生成AIビジネスでは外資勢も先陣争いで火花を散らす。

日本IBMの山口社長はAIの潜在力に期待をかける

「日本が今の経済力を維持するには圧倒的に人手が足りない。その対応策として、生成AIが真っ先に使える」。アクセンチュア(東京都港区)の保科学世執行役員は生成AIの活用に期待を込める。社内実践では「人間を超えるアイデアが出し始めている」(保科執行役員)と、生成AIがコンサルのあり方を一変させる可能性も示唆する。

日本IBMの山口明夫社長は「これからはビジネスも経営のやり方もAI活用が前提となり、その上で自分は何をするのか、自分の価値とは何かを考えないといけない」と指摘。「AIは新しい仕事のやり方や社会自体を新しく作り上げる潜在力を秘めている」とみる。

シンクタンク新体制 次の飛躍へ

市場の変化が進む中、コンサル力に定評のあるNRIと、シンクタンク事業への参入を計画するISIDが11月にそれぞれ社長交代を発表した。NRIは24年4月1日付で柳沢花芽常務執行役員(56)が社長に昇格。此本臣吾会長兼社長(63)は会長として柳沢氏をサポートする。

此本会長兼社長は交代の背景を「在任期間が8年目に入り、組織が淀む前に交代すべきと考えていた」と説明。また「23―25年度の中計は次の飛躍に向けた仕込みを行う3カ年であり、施策が動き出すのを見極めてからバトンタッチするのがよいと判断した」と打ち明ける。

ISIDは24年3月22日付で岩本浩久専務執行役員(52)が社長に昇格し、名和亮一社長(66)は顧問に就く。22―24年12月期の3カ年中期経営計画を1年残しての交代となるが、名和社長は「社長を5年間務め、今中計で掲げた経営目標は定量的には前倒しで達成し、一段落した。長期目標の『ビジョン2030』の達成に向けて、経営を次代に渡すべきと判断した。(23年の)夏前には決めていた」と胸中を語る。

両社は情報サービス業界の老舗であり、業界の地殻変動の予兆としても注目される。少子高齢化や地域活性化などの社会課題に対し、IT・情報サービス各社が視野を広げて、どう向き合うかが問われている。

日刊工業新聞 2023年12月27日

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