新規口座開設3倍…新NISAで追い風、証券各社の次なる一手は?
取引額引き上げ、資産形成柔軟に
2024年1月に開始した新たな少額投資非課税制度(NISA)が個人投資家の裾野を広げ、証券ビジネス発展の追い風となっている。制度改正により、買い付けた上場株式などを非課税・無期限で保有できるようになり、取引額が引き上げられたことでより柔軟な資産形成が可能になった。2月のNISA口座の新規開設件数は23年比で約3倍に増加する中、証券各社は多様なニーズに対応する。(地主豊)
大和証券は若年層を中心に普及しつつあったNISAが「制度拡充で高齢富裕層への訴求を後押しする」とみる。「富裕層も進んで活用すべき内容になり、証券業界にとって大きなゲームチェンジ」と捉える。年齢を問わず投資の初心者層に対して、個々の目標や生活スタイル、リスク許容度に合わせて中長期的に資産形成を後押しする考えだ。インフレのリスク対策として投資を始める層の取り込みも視野に入れている。
SMBC日興証券は、NISAや投資信託に関する記事の発信をオンラインで始めた。「手軽に分散投資できる投資信託の重要性は高まっている」としており、分かりやすく簡単で便利な投資体験の提供に力を入れる。「例えば、新NISAでは対象外となる銘柄があり、既存の顧客には分かりづらい」という。加えて「NISA口座を開設していない、または証券投資に関心がない層への制度の周知が必要」とみている。
野村証券は新NISAを機に投資の成功体験を積んでもらうため、コンサルティングに重点を置く。顧客の属性に合わせた総合的な資産管理サービスを提供し、「株や債券、投資信託への分散投資を促し、長期目標に向けた運用をサポートする」と説明する。資産形成を終え相続・贈与に関心を持つ世代には、子や孫をターゲットにNISA活用による次世代への資産移転も見据え、投資の裾野拡大を図る。
制度改正を背景に、24年1月から2月にかけてNISA口座の新規開設件数は増えている。日本証券業協会の調査によると、証券大手5社とネット証券5社の2月末時点のNISA口座数は約1400万件に達した。2月の新規開設件数は約53万件で、23年1月から3月の1カ月平均に当たる約18万件の3倍近くだった。日証協の森田敏夫会長は「『貯蓄から投資へ』の流れがようやく動き始め、大きな変化になってきた」と手応えを話す。活況を維持するには、各社の継続的な取り組みがカギといえそうだ。