廃材なのに純チタンよりも高い強度、阪大がスポンジチタン再生
大阪大学の近藤勝義教授は、チタン製品の製造工程で発生するスポンジチタン廃材の再生技術を開発した。廃材でありながら純チタンやチタン合金よりも高い強度を持ち、採用した製品の小型・軽量化を可能にする。再生工程のエネルギー消費も少なく、低コストで製造できる点も強み。圧延加工技術を持つ武生特殊鋼材(福井県越前市)と連携し、実用化を目指す。
スポンジチタンは鉱石を反応させて製造する。内部は純度が高くチタン製品に利用する一方、周囲は不純物となる鉄を多く含むため廃材となる。スポンジチタンの1、2割が廃材となるが、チタンへの再生はできずに製鉄に使われている。
近藤教授は廃材に水素を含ませ、加熱する方法を開発した。チタンは水素を吸収すると延性が低下しもろくなるため、製造工程では水素を遠ざけるのが“常識”だった。近藤教授はこれを逆手にとり、廃材を水素で粉砕しやすくした。粉末は粒径20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)と均一にできるという。
再生に当たってはこの粉末を容器に入れて加熱し、粉末が固まった焼結体にする。加熱中に水素が抜け、さらに不純物の鉄が原子のまま分散。鉄も延性を低下させる作用があるが、分散によって強度を高める役割を果たす。焼結体を圧延加工した再生チタン材は強度を示す耐力値が1118メガパスカル(メガは100万)あり、純チタンの2・8倍、チタン合金の1・3倍強くなることも確認した。
再生時の加熱温度は融点未満のため、高熱を必要とせずにエネルギー消費が少なくて済む。また、チタン焼結体の大型化も可能なことから、プレス機が不要で生産コストも抑えられる。すでに、武生特殊鋼材がチタン焼結体を熱間圧延加工したチタン製品を試作した。開発は環境再生保全機構(川崎市幸区)が支援している。
チタンは航空機エンジンや建築物、装飾品などに使われる。3次元(3D)プリンターで成形品を作る粉末材料にもなっており、近藤教授が開発した方法によってチタン粉末も高純度に再生可能という。
スポンジチタンは日本やロシア、ウクライナ、中国に生産が集中している。原料の鉱石の産出国も豪州などに偏っており、廃材の再生が経済安全保障にもつながる。