ニュースイッチ

「SAF用バイオエタノール」量産へ…製紙4社、それぞれの生産計画

「SAF用バイオエタノール」量産へ…製紙4社、それぞれの生産計画

王子HDが東京都江戸川区の工場内に設置するベンチプラント。非可食性の木材から乳酸やエタノールを製造する

製紙4社で非可食性の持続可能な航空燃料(SAF)用バイオエタノールの生産計画が出そろった。大半の企業がバイオ系ベンチャーとの連携で進め、2027年度には供給で足並みがそろう見通しだ。大王製紙は古紙などを用いてエタノールのほかアミノ酸、バイオプラスチック原料を製造。レンゴーは建築廃材を使うエタノール生産に向け、完全子会社の大興製紙(静岡県富士市)を拠点に公的支援分を含む約195億円を投資する。(編集委員・山中久仁昭)

大王製紙、レンゴーはリサイクル材を活用するのが特徴で、それぞれ新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオものづくり革命推進事業」に採択された。大王製紙はバイオに明るいグリーンアースインスティテュート(GEI)と協業する。詳細は非公表だが、産業用微生物を活用しエタノール以外も生産する。

レンゴーは27年度から、バイオエタノールを年約2万キロリットル生産する計画だ。酵素の製造・反応に詳しいBiomaterial in Tokyo(福岡県大野城市)と提携。事業規模約195億円のうち、NEDOが研究開発に約96億円を支援する。大興製紙が持つパルプ蒸解設備をベースに、エタノールパルプの製造ラインを増設。糖化・発酵・蒸留の各設備を追加する。

これらに先立ち、王子ホールディングス(HD)と日本製紙の大手2社はリサイクル材ではなく、紙原料である木質パルプからエタノールを生産する方針を打ち出した。実証で先行する王子HDは段階的に生産を増強し、30年度に年10万キロリットルを供給する目標だ。

都内のベンチプラントでの基本技術確立を経て、王子製紙米子工場(鳥取県米子市)に実証設備を導入中。24年度後半からエタノールを最大年1000キロリットル、糖液を同3000トン生産する計画だ。パルプからセルロースを抽出し、糖化によりグルコースを生成。発酵で乳酸やエタノールをつくる。

一方、日本製紙は住友商事、GEIとの協業によって、27年度から年に数万キロリットルを生産する方針。国産木材利用量の約25%を占める、製紙用チップの新たな用途と捉える。

日本製紙は23年春、日刊工業新聞の取材に「量産には設備とエンジニアリングがカギを握り、数百億円規模の投資が必要」とした。各社とも、SAFまでの作り込みには専門企業や大学との連携が不可欠との認識で一致している。

製紙各社は長年扱ってきた木質バイオマスを基に、サトウキビやトウモロコシ由来のSAFのような食料用途との競合が生じず、環境負荷が低い強みをアピールする。紙の需要が先細りする中で、蒸解釜などパルプ設備の有効活用にも対応していく。

ただSAFなどは量とコストが相関関係にあり、より具体的で柔軟な計画の策定と実行が求められる。国内の航空会社は石油依存から脱却するため、30年までに燃料需要の10%をSAFにする目標を掲げる。製紙業界がどこまで寄与できるかが問われている。

日刊工業新聞 2024年02月29日

編集部のおすすめ