自動車部品の素材リサイクル活発、化学業界があの手・この手
化学業界が製品の環境対策に一段と力を注いでいる。塩ビ工業・環境協会(VEC)は樹脂窓のリサイクルビジョンの公表などを検討。日本プラスチック工業連盟と日本スチレン工業会は連携してポリスチレン(PS)のリサイクル拡大を目指している。化学メーカー各社は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けて、自動車部品に関わる素材のリサイクルに向けた取り組みが活発だ。(山岸渉)
化学関連団体では、製品のリサイクルに向けた動きが活発化している。日本スチレン工業会は日本プラスチック工業連盟が立ち上げたPSワーキンググループに参加し、リサイクルの課題解決や取り組み強化を検討している。日本スチレン工業会の室園康博会長(PSジャパン社長)は「2022年11月に発表した内容から進化した取り組みを業界として検討し、進めていこうという段階だ」と語る。
【樹脂窓】工業会が回収指針策定
カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みとしては、住宅・建築物の断熱性強化によるエネルギー消費効率の向上も重要視されている。特にリサイクルの重要性が増しているのが、塩化ビニール樹脂による窓。樹脂窓はアルミ窓と比べて冬期の断熱性能で3割程度の省エネルギー効果を得られる。
VECでは樹脂窓のリサイクルシステムの構築を狙いに産学官メンバーで構成する委員会を立ち上げ、19年から検討してきた。リサイクルビジョンの策定や一部地域での社会実装を想定。回収方法などを詰めた上で、VECの柳沢伸治専務理事は「5―7月ごろにはビジョンを公表したい」と語る。
国内では樹脂窓の普及が進みつつある。住宅着工戸数に占める樹脂窓の割合は2割を超え、需要が年々増えている。特に寒冷地である北海道では、住宅における樹脂窓が9割以上を占める。設置から20年以上経過している場合もあり、リサイクルへの需要が高まっている。サッシメーカーからも「できるだけ早期にリサイクルに着手したい」(柳沢専務理事)との声が根強い。
【車部品】再プラ需要高まる
最近では自動車関連の化学製品についてもリサイクルの動きが活発だ。脱炭素化や電気自動車(EV)シフトを踏まえ、環境に優しい材料に対するニーズが高まっていることが背景にある。
例えば、エアバッグなどの素材として使われている旭化成のポリアミド66「レオナ」。同社はマイクロ波化学と共同でポリアミド66をリサイクルする技術の実証実験を始めた。
マイクロ波技術を活用し、ポリアミド66を使用した自動車部品の廃材などをヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸(ADA)に分解、再びポリアミド66としての再資源化を図る。ケミカルリサイクルによって、温室効果ガスの排出量削減につながるポリアミド66の製造法開発を目指す。
23年度内にマイクロ波化学の大阪事業所(大阪市住之江区)内でベンチ設備の製作を開始する予定。24年度には小型実証試験を実施して実用化に向けてプロセスのデータ収集に取り組む計画で、25年度までに事業化の可能性を判断する。
一方、住友化学とリサイクル企業のリバー(東京都墨田区)は自動車の廃プラスチックを製品として再資源化するシステムの構築に向けて業務提携した。リバーが持つ廃車の回収などのノウハウを活用。住友化学は素材のペレット化や混練樹脂(コンパウンド)などで高品質な再生プラスチックを生産する。早ければ25年度にも自動車関連メーカー向けの製品供給を目指す。
団体、メーカーを問わず、今や化学業界にとって最重要テーマの一つとなった環境対応。リサイクルの取り組みも今後さらに広がりそうだ。
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