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“夢のエンジン”「RE」開発復活、マツダの電動化戦略の可能性を広げられるか

“夢のエンジン”「RE」開発復活、マツダの電動化戦略の可能性を広げられるか

ロータリーエンジンが「未来の環境エンジンとして社会に役立つよう試す時がようやく到来した」と講演するマツダの毛籠社長

マツダは2月、約6年ぶりにロータリーエンジン(RE)開発グループを復活させた。REは1967年に世界で初めて同社が量産化に成功したエンジンだが2012年に生産を終了、18年に組織も解散していた。このほどREを発電機に使うプラグインハイブリッド車(PHV)を発売。水素などあらゆる燃料にも対応できる同エンジンは、カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)実現の有効な手段として再び期待がかかる。

「未来の環境エンジンとして社会に役立つよう試す時がようやく到来した」―。2月、サステナビリティー(持続可能性)ブランドをテーマにした国際会議でマツダの毛籠勝弘社長はこう強調した。REはピストンの代わりに、ローター(回転子)を使うエンジンで、ドイツ人技術者のフェリクス・ヴァンケル博士の発明。ピストンを使う一般的なレシプロエンジンより、小型・軽量・高出力という特性を持つ。RE搭載の小型スポーツカーである「RX―7」は大ヒットしたが、燃費の良いエンジンに開発資源をシフトするためREの生産終了を決断した経緯がある。

小型スポーツ車のコンセプトモデル「MAZDA ICONIC SP」

マツダはREに「発電機」としての役割を持たせCN実現に向け再び息を吹き込んだ。23年10月にはREを電源に、電池とモーターを組み合わせた「ロータリーEVシステム」を搭載したPHVタイプの小型スポーツ車のコンセプトモデル「MAZDA ICONIC SP(アイコニック エスピー)」を世界初公開。走行の全てをモーター駆動とし、電池を再生可能エネルギー由来の電力で充電すればGHG排出量ゼロでの走行が可能だ。

さらに同システムは、水素、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)も燃やせるため、拡張性の高さが期待されている。

復活したRE開発グループでは「まず米国や欧州の(環境規制に適合させ認証を取得する)エミッション適合性開発に焦点を当てる」(毛籠社長)計画。CNの時代、“夢のエンジン”が同社の電動化戦略の可能性を広げられるか。マツダの挑戦は続く。


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日刊工業新聞 2024年03月12日

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