ホンダ・マツダ…「春闘」満額回答、高水準の賃上げは産業界に波及するか
2024年春季労使交渉(春闘)は、3月中旬の集中回答日を待たず、2年連続で早期回答が相次ぐ。自動車大手は組合要求に対し、過去最高水準となる満額回答を示しており、高水準の賃上げが産業界全体に広がるか注目される。
ホンダは21日、2回目の労使交渉で満額回答した。ベースアップ(ベア)は23年比3・5%増の月1万3500円、定期昇給などを加えた総額が同5・2%増の月2万円、賞与は年7・1カ月とした。いずれも確認できる1989年以降で最高。満額回答は、組合の要求がなかった21年を除けば20年以来4回連続となる。
非正規従業員についても、正規従業員とのバランスを考慮し、平均5・3%の賃上げを実施する。22年に設けた能力開発のために使える月額1500円の費用も、24年度から給料に含める。
同社は24年3月期連結業績が過去最高となる見通し。会社側の交渉委員長を務める青山真二副社長は「経営として職場のがんばりに報い、今後のより一層のがんばりに期待するという強い意志の表れ」とコメント。稲村真矢ホンダ労政部部長は「日頃から労使間で課題を議論していて早期に課題認識が一致したため」と説明した。
マツダは同日に開いた1回目の労使交渉で満額回答した。ベア、定期昇給を含む賃上げの総額は月1万6000円、賞与は年5・6カ月とした。賞与とベア、定期昇給を含む総額は現在の人事制度になった03年以降過去最高の水準。今回の賃上げの総額は23年比6・8%相当の増加となる。
回答指定日の3月13日より大幅に前倒して回答。その理由について、竹内都美子執行役員は「(過去最高益を見通す23年度の好業績などの)頑張りを従業員と共に早く分かち合いたい。地域の取引先にも良い影響が広がることを期待した」とコメント。残る3回の労使協議会では電動化施策や組織風土改革への理解を深める協議に充てる。
トヨタ自動車も21日、1回目の労使交渉を実施したが、賃金や一時金など要求に対する具体的な言及はなかった。労働組合は過去最高水準となる賃上げを要求している。
イオングループの中核子会社、イオンリテールは21日、正社員の平均賃上げ総額を月1万9751円(6・39%)とすることで妥結した。流通などの労働組合で構成するUAゼンセンが同日発表した。このうちベアは月1万円(3・24%)。約7万人のパートタイム従業員は2年連続で賃上げ総額が7%超となる。他のイオングループでも交渉妥結が相次ぎ、いずれも組合側の要求に対し満額回答だった。