ドコモが「経済圏」拡大で一手…オリックス・クレジットを792億円で買収、今後の注目は?
NTTドコモは6日、792億円を投じてオリックス・クレジット(東京都港区)を買収すると発表した。29日に同社の株式の66%をオリックスから取得する。携帯通信大手はスマートフォンを軸にあらゆる非通信サービスを連携させた自社経済圏の拡充でしのぎを削る。金融・決済事業が経済圏の柱となる中、個人向け無担保ローン、長期固定金利住宅ローン「フラット35」といったオリックス・クレジットの強みを融合する。
ドコモによる株式取得後、オリックスの出資比率は34%となる。オリックス・クレジットの社名や代表者、人員削減、サービスの変更はしない。
オリックス・クレジットは1979年6月の設立で、23年3月末時点の社員数は436人。87年に高所得者向けの「オリックスVIPローンカード」を開始し、23年末時点の無担保ローンの貸付残高は約1000億円。地域金融機関が取り扱う個人向け無担保ローンの保証業務も手がけており、全国250以上の金融機関と提携している。フラット35の23年度の融資実行件数は約7000件と国内2位。22年度の税引き前利益は約114億円だった。
ドコモは22年7月に個人向け無担保ローンサービス「dスマホローン」を開始。24年2月時点の累計貸付実行額は370億円に達していた。ただ金融・決済事業を柱とした自社経済圏の拡充でKDDIやソフトバンクとの競争が激化した。
さらにカードローンなど個人向け無担保ローンに強みを持つ楽天グループが携帯通信事業を強化している。ドコモの江藤俊弘執行役員は「数年以内に無担保ローン事業で楽天グループに追いつき、追い越したい」と意気込む。
ドコモは23年10月に約486億円を投じたマネックス証券の買収を発表。金融・決済事業への大型買収が続く中、課題とされる自前の銀行機能がないことへの対応にも注目が集まる。