航空機1機当たり人員半分に、ANAが地上支援業務の改革急ぐ
全日本空輸(ANA)は航空機の誘導や手荷物の搬送・積み下ろし業務を大幅に省人化する地上支援業務(グランドハンドリング)改革に着手した。自動化技術を使い、中型機のボーイング787に必要な1機当たりの人員について半分以下を目指す。2025年度中に羽田空港でモデル実証を始める。人手不足が深刻化する中、旅客需要の増加に対応できる体制を整備する。
ANAはB787のグラハンのランプ業務を担う1機当たりの人員を現在の12―13人から半分以下への省人化を目指し、新たな業務モデルを構築する。手荷物や貨物を入れたコンテナをけん引する無人運転トーイングトラクター(TT)を導入するほか、旅客搭乗橋(PBB)の完全自動着脱などを検討する。25年度中に羽田空港で一連の実証実験を始め、その後2―3年後をめどに実用化する。
同社は21年から高度な自己位置推定性能と走行性能を備えた自動運転TTの実証実験を行っており、同車両を使い無人搬送を行う。自動運転レベルをレベル4に引き上げる。これまでに人が乗った状態での実験で車線合流の自動化などを確認した。交通量の多い羽田空港で荷台を長く連結したTTを無人運転化することは難易度が高いため、安全性を高めるため道路側の追加対策も検討する。
B787のランプ業務の変革は、同社のコンパクトハンドリング構想の一環。B737などの小型機では、リモコン式航空機けん引機や、バラ積み手荷物を機体内に搬入するローラー式のコンベヤーの導入により、省人化を進めている。
グラハンは、コロナ禍での採用縮小や離職者の増加により人手不足が深刻化している。足元では急激に航空需要が回復しており、将来の労働人口減少への対応を踏まえた業務改革と人材確保が急務となっている。
日刊工業新聞 2024年3月5日