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コロナ禍で赤字5500億円も、ANAHDの財務状態の回復が始まった

ANAホールディングス(HD)はコロナ禍で悪化した財務状態の回復が始まった。2023年4―6月期連結決算は同期間として4期ぶりに営業黒字に転換。自己資本は6月末時点で22年3月末に比べ1155億円増の9127億円、有利子負債は1771億円減の1兆5729億円となり、D/Eレシオは2・2倍から1・7倍に改善した。

自己資本比率重視、26年37%に

グループ経理・財務室の礒根秀和財務企画・IR部長は「コロナは、リーマン・ショックなどの10倍ほどのインパクトがあった」と話す。20―21年度に計上した当期赤字は合計で約5500億円。公募増資や劣後ローンなど多様な手段で資金を調達し、約1兆円の手元流動性を確保した。有利子負債は22年3月末に1兆7501億円に膨らんだ。

借入金を返済して有利子負債を圧縮し、自己資本を蓄積して「今後3年間で自己資本比率などをコロナ前に戻したい」と礒根部長は話す。26年3月末時点で有利子負債1兆1000億円、自己資本1兆1000億円とし、自己資本比率を約37%への回復を図る。

財務の健全化に向けて、ポイントに置くのは自己資本比率と自己資本の絶対額だ。同社はコロナ禍で有利子負債が増加した一方、返済原資となる営業キャッシュフロー、特に国際線旅客事業の回復スピードが遅く、格付投資情報センター(R&I)による格付けがBBB+となった。社債発行などの直接金融で資金を調達するにはA格水準が重要だ。

早期のA格復帰とともに、再びコロナ禍並みに業績が悪化した場合にも多様な資金調達手段を確保するためには、業績下振れリスクを吸収できる一定水準以上の財務基盤が必要なため、自己資本比率などを重視する。

26年度以降の中期的には、総資産を圧縮して手元流動性を5000億円とし、自己資本を蓄積して自己資本比率45%水準とする。「コロナで目線が変わった」(礒根部長)。

23年度の業績は好スタートを切り、今後の動向が注目される。

日刊工業新聞 2023年08月24日

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