「新参者」の戦略は?…中国EV大手・BYD、日本参入1年の現在地
快適・便利な移動体験提供
中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD)が日本の乗用車市場に参入し約1年が経過した。2023年1―12月の累計登録台数は1446台と、まずまずの成果となったようだ。24年2月末時点では同1700台弱まで拡大。乗用車販売を担うBYDオートジャパン(横浜市神奈川区)の東福寺厚樹社長は「3000台を超えると街中で見かけるようになる。早くそうした状態を作りたい」と試行錯誤する。世界でEV需要が陰りを見せる中、「新参者」(東福寺社長)は日本でどんな戦略を取るのか。(大原佑美子)
BYDがこれまでに日本市場で投入したEV乗用車は2車種。23年1月にスポーツ多目的車(SUV)「アット3」、同年9月に小型車「ドルフィン」を発売した。24年6月をめどにセダン「シール」の投入を予定する。25年、26年にも新型EVの発売を計画しているが、あえて目標台数は公言しない。BYDオートジャパンの親会社で商用車を含む日本の事業会社であるビーワイディージャパン(横浜市神奈川区)の劉学亮社長は「EVがただの移動ツールではないことを伝え、普及させる方が今は大事」と付加価値向上に取り組む姿勢を打ち出す。
その一環として、快適で便利な移動体験を提供するためアット3を改良。新色を追加したほか、約3インチ大きくしたディスプレーを通じて音楽サービスやカラオケを楽しんだり、インターネット検索を利用したりできるようにした。ハードウエア、ソフトウエアそれぞれに改良を加え、従来比で10万円程度の値上げとなる。有名アーティストとタイアップしたCMなどで認知度向上を目指す。
4月以降をめどに、ディーラーのデモカーや同社の社用車などを対象とした認定中古車の販売も始める。またBYDが持つ蓄電池技術やEVを用いて、日本企業との連携によるエネルギーマネジメント事業の展開にも意欲を見せる。
世界的にEV普及の勢いが弱まっていることに関し、劉社長は「世界は日々変わる。EVを通じたインフラやライフスタイルなど総合的に見れば(電動車が必要とされる)流れは変わらないだろう」と自信を示す。