ニュースイッチ

「石化再編」活発化…レゾナックHDが〝らしい〟新たな一手

従業員・株主と“三方よし”

石油化学業界の再編に新たな一手が出てきた。レゾナック・ホールディングス(HD)が子会社レゾナックの石化事業を分社化した上で、新会社の一部株式を保有して2026年の上場を目指す検討を始めた。石化事業が持続可能な成長を目指しつつ、従業員や株主などが“三方よし”となる一つの施策として取り組む。石化業界は24年に入り、脱炭素対応を含め再編に向けた動きが一層活発になっている。(山岸渉)

「金融業界出身の高橋秀仁社長らしい施策だ」。ある化学メーカー幹部はこううなった。レゾナックHDは石化事業を分離し、新会社の株式を一部(20%未満)保有する「パーシャル・スピンオフ」の検討を始めた。パーシャル・スピンオフは、23年度の税制改正で始まった税制上の優遇がある事業再編の仕組みだ。残りの株式は現物配当でレゾナックHDの株主に分配し、新会社は東京証券取引所の上場を想定する。

レゾナックHDの高橋社長は「三方一両得の考え方」と強調。従業員や株主、社会的責任を考えた際の良い解の一つとした。レゾナックHDが一部株主となることで、新会社の従業員はレゾナックグループとして働き続けられるほか、新会社と脱炭素対応を含む持続的な成長に向けて研究開発面で連携できる。株主は税制上のメリットや保有について柔軟な選択肢がある。レゾナックも注力する半導体・電子材料の戦略が打ちやすくなる。

レゾナックの石化事業(23年12月末概算)は売上高3163億円、営業利益87億円と、石化の事業環境が厳しい中でも一定の収益を上げた。上場に際しては「しっかりとした安定収益ができるというのがアピールポイント」(レゾナックHDの染宮秀樹取締役)と強みを説明する。

一方で他社との連携の可能性も模索する。パーシャル・スピンオフは「オプションの一つ。各社で石化再編の機運が高まっており、よりベターなことがあれば、そちらを取る可能性はある」(高橋社長)とした。

実際、石化再編の動きは各社で活発化している。三菱ケミカルグループは4月に就任する筑本学次期社長の下、石化再編の戦略などを練り直す考え。住友化学は業績悪化を受け、構造改革の骨子などを4月に公表する予定だ。旭化成も石化関連事業について、24年度中に方向性を示す意向。脱炭素関連では住友化学と三井化学、丸善石油化学が千葉県の京葉臨海コンビナートで3社連携を検討。出光興産や東ソーなどは山口県の周南コンビナートでのカーボンフリーアンモニア供給網の構築などについて、公正取引委員会から「問題なし」との回答を受けた。

ただ、需給環境の変化や脱炭素を踏まえ、経済安全保障上で重要な石化事業の新たな姿をどう示すかが重要でもある。各社はより良い石化の未来の実現に向けて知恵を絞る。

日刊工業新聞 2024年02月22日

編集部のおすすめ