ジェフ千葉がイベント開催…普及に期待、“歩くサッカー”の魅力
多様性尊重、気付き促す
“歩くサッカー”の「ウオーキングフットボール」の魅力に取りつかれる人が増えている。サッカー経験や年齢、性別を問わず誰でも参加ができ、障がい者も一緒にプレーができるからだ。ダイバーシティー(多様性)を尊重する風土の醸成、健康経営の促進、地域貢献といった面からも企業にもウオーキングフットボール普及に期待する声が出ている。(松木喬)
ウオーキングフットボールは、全選手が歩いてプレーする。相手選手への接触やスライディングは禁止。日本サッカー協会の推奨ルールは1チーム6人、コートは20×30メートル、ゴールは高さ1・2×幅3メートル。さらに「全員がプレーを楽しむ」こともルールに掲げる。
サッカー・Jリーグのクラブ、ジェフユナイテッド市原・千葉(ジェフ千葉)は地域と連携した社会活動にウオーキングフットボールを採り入れている。ジェフ千葉の運営会社、ジェフユナイテッド(千葉市中央区)の白井翼さんは「歩くので運動能力の差が均等になり、みんなが楽しめる」と魅力を語る。
ジェフ千葉は2022年9月、一般から参加を募ってウオーキングフットボール大会を開いた。協賛した古河電気工業の社員を含めた3歳から64歳の96人を、年代が重ならず知人も一緒にならないように8チームに編成。ジェフ千葉レディースの育成組織の選手が入り、参加者が緊張せずにコミュニケーションを取り合えるように「リエゾン(仲介)」を務めた。
いざ、試合が始まると「ナイスパス」「ドンマイ」とかけ声が飛びかった。試合後にはハイタッチをするなど、参加者は打ち解けられた。
各チームには知的障がいや精神障がいを持つ人も入った。初めての試みであり、チームメートには誰が障がい者なのか伝えなかったが、「懸命にボールを追っていて、障がいの有無を感じさせなかった」(白井さん)と、当日の光景を思い出す。
初対面の老若男女と障がい者の“混成チーム”にした狙いについて、「日常生活や仕事に戻った時、いろいろな個性を尊重する気付きになってほしかった。身体能力が劣る人に限らず、コミュニケーションが苦手な人への配慮もある」(同)と説明する。
多様性がテーマのイベントだと、関心がある人だけが参加する。ウオーキングフットボールなら、関心のなかった人にも多様性について考えるきっかけを与えられる。23年の大会は悪天候で中止となった。時期は未定だが24年も開催する。白井さんは「企業や医療機関など、発信力やノウハウを持つ団体と連携してウオーキングフットボールの魅力を届けたい」と思いを語る。
健康経営・地域貢献 安全に楽しく足・頭を鍛錬
一方、津端内科医院(新潟県三条市)の津端俊介院長は、健康面からウオーキングフットボールに注目する。ジョギングやウオーキングと同等の「中強度」の運動量と言われており、生活習慣病の改善効果が期待できるからだ。また、前方だけでなく、横移動によって足の筋肉を鍛えられる。
津端院長は23年5月の連休中にウオーキングフットボールを知った。「運動負荷が少なくて安全。サッカーやフットサルよりも参加ハードルが低い。運動習慣のない人も楽しんで体を動かせる」と魅力に取りつかれ、コーディネーターになった。同年9月には地元のJリーグクラブ、アルビレックス新潟と体験会も開いている。
サッカー未経験の津端院長にはほかにも新鮮なことがあった。「プレーは頭を使う。動きが遅い分、パスをもらいやすい場所を探して移動する。それは全員が楽しめるように考えることであり、自然と他人を思いやっていた」と体験談を語る。
そして津端院長は、社内レクリエーションとしても提案する。「性別や年代を問わず楽しめるので、従業員が交流を深められる」からだ。もちろん健康経営にもつながる。また、社外と連携してイベントを開くと地域貢献にもなる。企業の発信力に期待しており、「ウオーキングフットボールが普及すると、すごい力を発揮する」を言葉に熱を込める。
23日、サッカーJリーグが開幕する。“ウオーキングフットボール熱”も高まりそうだ。