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トヨタの4―12月期は売上高最高も…グループ不正、好業績に暗雲

トヨタの4―12月期は売上高最高も…グループ不正、好業績に暗雲

強みとするHVがけん引(プリウス)

トヨタ自動車の収益力が一段と増している。2023年4―12月期連結決算は売上高、各利益段階ともに4―12月期として過去最高を記録。24年3月期連結業績予想も営業利益が4兆9000億円と5兆円に迫る。好業績をたたき出す一方、今後グループの不正が収益に影響する懸念もある。長納期化を解消するため工場などに高い負荷がかかっているとして、事業体制の見直しにも着手。次なる飛躍に向け一度“かがむ”ことを選択する。(名古屋・川口拓洋)

豊田章男会長が社長に就任した09年以降進めてきた、商品の競争力を高める「もっといいクルマづくり」と地域のニーズに適した商品を展開する「町いちばん」の活動の成果が収益体質の強化として明確に表れている。宮崎洋一副社長も「仕入れ先や販売店など生産・物流・販売・サービスに関わるステークホルダー(利害関係者)のおかげ」と語る。

好業績のけん引役はトヨタが強みとするハイブリッド車(HV)だ。宮崎副社長は年間のHV販売台数について22年の260万台に対し23年は340万―350万台と説明。「年間約100万台増えている」とする。需要は北米や欧州でも堅調。北米では内燃機関車の在庫が14日分あるが、HVは5日を切る程度しかない状況。HVは価格が高く、生み出す利益も多いとみられる。同社はHVが年間販売500万台を超えるタイミングを、従来の26年から25年に前倒しすることも視野に入れる。

販売増を支える要が販売店だ。オンライン販売など実店舗に頼らない販売形式も普及してきたが、宮崎副社長は「高まった商品の良さを代弁してくれる力は大きい」と販売店の存在意義を強調する。

電気自動車(EV)が普及する中国でもHVやプラグインハイブリッド車(PHV)が好調。トヨタ・レクサスの23年4―12月期の販売台数は前年同期比2・1%増の152万台となった。EVで生じる価格競争に巻き込まれないというトヨタの戦い方も、HVの競争力があってこそだ。一方で、走り心地よりも居心地を重視する中国市場の特異さについて「商品の要望に寄り切れていない」と宮崎副社長は課題を示す。

好調な業績の一方で今後の押し下げ要因となるのが、ダイハツ工業豊田自動織機で起きた不正問題だ。24年3月期予想で、ダイハツについては2月末までの出荷停止を加味。豊田自動織機は2月10日までの状況を織り込んだ。車両ベースで20万台減の影響とみる。

不正の遠因の一つが生産や開発スピードの加速だ。その対応のため、新たに仕事の効率を上げて足場を固める方針を掲げた。短期だけでなく長期で高収益を生み出し続けることを重点に、生産や開発状況を点検する。


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日刊工業新聞 2024年02月08日

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