電力の複数調達で価格やリスクを抑える!3つの受電方法
調達ミックスで発想を変える(分割受電/部分供給制度)
電力取引市場から大量の電力を市場価格連動で供給することをコミットした場合、小売電気事業者は、取引市場で適切な量を確保できるかという調達リスクや電力価格がはね上がる価格リスクを抱えてしまいます。したがって、複数の事業者から調達することも選択肢です。
複数の事業者から分割して供給を受ける分割受電(電気事業法では「部分供給」)も、制度的には可能です。分割受電の形は3つがあります(図1)。
①横切り型
ある程度安定供給を確保するアプローチです。1社からは一定の電力量を購入し、別の1社からは需要の変動に合わせて供給を受ける方式です。安定的な電力供給と変動する電力供給を組み合わせるわけです。ただし、電力契約量が減りすぎる場合に小売電気事業者のメリットは落ち、難しい調達ばかり担わせられることには消極的でしょう。
②縦切り型
安い昼間の電力だけ市場連動で調達し、夜は別の調達を行う時間帯で区切るアプローチです。昼間は安い市場価格連動で電力を調達し、夜は電力価格を別途調達します。
③通告型
調達を受ける時間と量に柔軟性を持たせる方式も考えられます。
いずれにしても、小売電気事業者にとって条件が悪くなる可能性がある契約を、どのように飲んでもらえるかがカギを握ります。小売電気事業者にとって契約条件が悪化し、競合においしいところを持って行かれることは面白くありません。分割受電(部分供給)を受け入れる事業者がいたとしても、2社への委託でカバーされていない領域が発生するリスクがないようにしなければなりません。そう考えると、まずは既存の小売電気事業者に対して、市場価格連動と燃料調整費による小売単価を組み合わせた料金メニューで、コストを抑える条件を交渉することが、ファーストステップです(図2)。
ポイント
●分割受電は制度上可能
●昼間の市場価格連動と燃料ベースの火力発電からの調達の組み合わせ方がカギ
●2社の供給で上手くカバーされないリスクがないかを精査
(「図解 今こそ見直す 工場の電力コスト削減」p.134-135)
<書籍紹介>
化石燃料の高騰により電力コストが上昇する中、電力取引市場や再生可能エネルギーなどコスト抑制のための調達契約の進め方、操業計画など工場内の対策、外部事業者の活用法などを詳述する。工場稼働の柔軟性を上げる切り口や新たな生産プロセスの構築、顧客への新規サービス提案に結びつく具体策を図解で指南する
書名:図解 今こそ見直す 工場の電力コスト削減
著者名:瀧口信一郎
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:2,530円
<執筆者>
瀧口 信一郎(たきぐち しんいちろう)
㈱日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
京都大学理学部を経て、1993年同大大学院人間環境学研究科を修了。テキサス大学MBA(エネルギーファイナンス専攻)。1994年日本総合研究所入社。2016年より現職。専門はエネルギー政策・エネルギー事業戦略・分散型エネルギーシステム。著書に「カーボンニュートラル・プラットフォーマー」(エネルギーフォーラム社)、「ゼロカーボノミクス」(日経BP・共著)、「ソーラー・デジタル・グリッド」(日刊工業新聞社・共著)、「エナジー・トリプル・トランスフォーメーション」(エネルギーフォーラム社・共著)など。
<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore
<目次(一部抜粋)>
第1章 電力供給の基礎知識
第2章 工場での電気の使い方
第3章 電力コスト削減に関わる制度・市場環境
第4章 電力コスト削減の実行