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もう黒子じゃない、京セラ・村田・太陽誘電…電子部品メーカーが“課題解決型”で台頭

もう黒子じゃない、京セラ・村田・太陽誘電…電子部品メーカーが“課題解決型”で台頭

京セラのオンボード光電気集積モジュール

17日開幕した国内最大級の電機・情報通信技術(ICT)の総合展示会「CEATEC(シーテック)2023」では、“課題解決型企業”の姿勢を打ち出し、黒子として埋没しがちだった従来からの変化を目指す電子部品メーカーの展示が目立った。ソサエティー5・0の実現には脱炭素や、現実空間と仮想空間の高度な融合などへの対応が不可欠。従来の強みを生かしつつ、他社との連携などで新たな技術も取り入れ、提案の幅を広げようとしている。(特別取材班)

脱炭素・高効率化を促進

電子部品メーカーはこれまでも小型化や高効率化など、環境負荷軽減につながる技術を磨いてきた。今回も日本ケミコンが、同一サイズの既存品に比べ2割多く電気をためられるアルミコンデンサーを展示。電極の役割を担う陽極箔を工夫し、電解液に触れる面積を増やすことで大容量化した。小型と大容量の両立が求められるスマートフォンの充電器などでの需要を見込む。

一方、次世代社会を支える基盤と期待される第5世代通信(5G)や生成人工知能(AI)の登場で、データセンター(DC)の電力消費量は急増。脱炭素の取り組みが急務になっている。

部品でこうした課題を解決しようとするのが京セラ。出展した「オンボード光電気集積モジュール」は、DCなどのサーバー内のプリント配線板に搭載し、中央演算処理装置(CPU)から出る電気信号を光信号に変換する。銅製の配線を使うことが多かったサーバー基板上での信号のやりとりを光ファイバーに置き換えてロスを減らし、電力消費削減につなげる。

太陽誘電はSOFCのセルを出展

他社も脱炭素対応を競う。太陽誘電は発電効率が固体高分子型より高い、固体酸化物型燃料電池(SOFC)のセルを出展した。基幹部材の厚みを薄くして一般的なSOFCより低い温度で作動できるようにし、構造を工夫して再起動までの時間も短縮した。

電子部品各社と同じエリアに出展した電線メーカーのフジクラは、比較的高い温度で超電導を実現できる「高温超電導線材」を披露した。電流の損失を減らしたり、強力な磁場をつくり出したりできる。送電ロスの少ないケーブルや高効率モーター、核融合発電で核融合を起こすためのプラズマを磁場で閉じ込めるためのコイルなどでの利用を見込む。

技術商社のネクスティエレクトロニクス(東京都港区)が出展したのは、水上ゴミ回収飛行ロボット(ドローン)。同社が国内で代理販売する、シンガポールのスペクトロニックの水素燃料電池を搭載した。二酸化炭素(CO2)を排出しない点や、リチウムイオン電池(LiB)を動力源に使うドローンより航続距離を延ばせる点を生かし、水素燃料電池の拡販につなげる。

外部連携で新用途開拓

ソサエティー5・0では電子部品の顧客も、従来のスマホ中心からインフラや医療など他分野に広がる。新たな顧客の課題に対応するには、部品各社が得意とするハードウエアだけでなく、ソフトウエアとの組み合わせがカギを握る。

村田製作所が参考出品したのは、蓄電池やAIなどを組み合わせ、ビルなどの空調を適切に制御する省エネシステム。AIは資本提携先のスタートアップの技術を使い、蓄電池やそれをコントロールするためのソフトは自社製だ。

ビルの空調設備は同じ出力で稼働を続けるより、一時的に電力供給量を増やして出力を高めるなど強弱をつけると効率が良いとされ、このタイミングをAIで見極める。深層学習のアルゴリズム(計算手順)で、運用期間が長くなるほどタイミングの予測精度を高められる。2024年度の実用化を目指す。

パナソニックインダストリーの透明導電フィルム「ファインクロス」

外部との連携で新たな用途を開拓する動きは他でも見られる。パナソニックインダストリーの透明導電フィルム「ファインクロス」は同社の量産技術と、協業先のカナダの新興企業、メタマテリアルズの設計技術を組み合わせた。

透明導電フィルムは電磁波を遮断する。電子レンジの窓に使って電磁波の漏れを防ぐことも可能だ。フィルムが透明で内部がはっきり見えるため、黒い線などが張り巡らされていた従来の電子レンジとの差異化が図れる。熱伝導性が高いため、自動車の窓に貼って曇り止めや融雪に使うことも想定する。


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日刊工業新聞 2023年10月18日

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