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工場操業を柔軟に…電力使用タイミングをシフトし、電気代を下げるには

おすすめ本の抜粋「図解 今こそ見直す 工場の電力コスト削減」

ピークカットの発展形としての需要調整

需要調整(デマンドレスポンス:DR)により、電力の消費を増やしたり減らしたりすることで、工場が市場価格に基づいて インセンティブを獲得するサービスが注目されています。
 電力需要ピークを抑え、使用最大電力の契約から決まる基本料金を抑える需要調整は、これまでも工場で行われてきました。契約電力、すなわち自社で使う電力容量の最大値を決めて契約すると、それ以上電力を使用した場合にペナルティが課せられます。電力単価の安い時間帯を利用しないまでも、電力需要のピークを抑えることが電力コストを低減させてきたわけです。

一時的なピークの抑制のために考えられるのは、ピークカットやピークシフトなどの対策になります。ピークカットは一時的に契約電力の超過を防げばよく、需要だけでなく燃料を用いた自家発電や蓄電池で一時的に電力供給を増やすことでも可能です。
 DRサービスは、まさにこのピークカットやピークシフトを時間ごとの電力単価に応じて行うことにより、対価を受けとれるものです(図1)。工場はこれまで基本料金の抑制に使ってきたピークカットとピークシフトを、どのように拡張するかがカギになります。

図1
 ピークシフトは、時間単価に合わせた操業時間の変更になります。時間単価のみならず、契約電力も考慮して柔軟な操業の組み立てることが重要です。

最近、太陽光発電の増加で昼間に電力が余っているため、昼間の電力使用が奨励されることがあります。電力の使用を減らすのではなく、増やすことで電力の使用調整をするものです。これは、電力消費削減が電力消費の「下げDR」であるため、電力消費の「上げDR」という言い方もされています(図2)。要は、電力の使用を「上げ」たり「下げ」たりして、電力を使用するタイミングをシフトし、トータルの電力使用量は変わらなくても単価の安い時間帯に工場を操業して、トータルの電力コストを下げようということです。
 今後は、時間ごとに単価の違う電力の柔軟な消費が焦点となります。

図2
ポイント
●ピークカットやピークシフトの仕組みはDRで生きる
●操業時間の調整はピークカットやピークシフトの延長線
●一時的な対策でなく、操業の見直しと体制づくりにまでつなげるのがカギ

(「図解 今こそ見直す 工場の電力コスト削減」p.112-113)

<書籍紹介>
化石燃料の高騰により電力コストが上昇する中、電力取引市場や再生可能エネルギーなどコスト抑制のための調達契約の進め方、操業計画など工場内の対策、外部事業者の活用法などを詳述する。工場稼働の柔軟性を上げる切り口や新たな生産プロセスの構築、顧客への新規サービス提案に結びつく具体策を図解で指南する
 
書名:図解 今こそ見直す 工場の電力コスト削減
著者名:瀧口信一郎
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:2,530円

<執筆者>
瀧口 信一郎(たきぐち しんいちろう)
㈱日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
京都大学理学部を経て、1993年同大大学院人間環境学研究科を修了。テキサス大学MBA(エネルギーファイナンス専攻)。1994年日本総合研究所入社。2016年より現職。専門はエネルギー政策・エネルギー事業戦略・分散型エネルギーシステム。著書に「カーボンニュートラル・プラットフォーマー」(エネルギーフォーラム社)、「ゼロカーボノミクス」(日経BP・共著)、「ソーラー・デジタル・グリッド」(日刊工業新聞社・共著)、「エナジー・トリプル・トランスフォーメーション」(エネルギーフォーラム社・共著)など。

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
Nikkan BookStore

<目次(一部抜粋)>
第1章  電力供給の基礎知識
第2章  工場での電気の使い方
第3章  電力コスト削減に関わる制度・市場環境
第4章  電力コスト削減の実行

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