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中国経済動向に一喜一憂、鉄鋼・非鉄・原油の2024年市況を占う

中国経済動向に一喜一憂、鉄鋼・非鉄・原油の2024年市況を占う

コスト増を背景に、異形棒鋼は23年に値上げが発表された

2024年の商品市況は、鉄鋼製品、非鉄ともに中国の経済動向に一喜一憂する展開になりそうだ。中国の追加経済対策が奏功して景気が上向けば、ともに需要が高まり価格上昇が見込まれる。ただ海外ではウクライナ・中東情勢、国内では人手不足、資源・エネルギー価格高騰などといったリスクが依然ある。新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが5類に移り、経済活動は活発になった、フタを開ければ総じて23年とほぼ同水準という状況もあり得る。

鉄鋼 【鋼材・東京地区】製造コスト増 強横ばい

24年の関東地区の鋼材市況は、強横ばいが予想される。引き合いは総じて強くないものの、製造に関するコストは増加傾向にある。現時点で東京地区では、鋼板品種の主要品目である冷延薄板、厚板、建材品種のH形鋼、異形棒鋼の全てが2カ月以上横ばっている。

23年の引き合いは強さが欠けた。製造業で多く使われる鋼板品種は、薄板が自動車の生産回復以外は「需要が好調な話を聞かない」「引き合いの大きな上下はなさそうだ」(流通筋)という。建材品種も中小物件を中心に動きが少ない。背景の一つには人材不足があり、その状況は24年も続きそうだ。

エネルギーコストや原料費などは増加傾向にある。異形棒鋼の販売会社は、コスト増を理由に値上げを実施した。

24年の市況について、UBS証券の五老晴信エグゼクティブディレクターは「高炉メーカーはマージンを重視し、この先も供給能力を絞る戦略だ。在庫削減は進み、循環的ボトムアウト局面に向かうが、この先の大幅な在庫増は考えづらい。コストは上がるため、メーカーは値上げする可能性が高く、市況は上げ基調になるだろう」と分析する。引き続き、市況を見定めるには需給双方の動きを注視する必要がある。

鉄鋼 【鋼材・大阪地区】安値販売解消、先高を期待

自動車は生産回復が進み、薄板の需要も戻ってきている(イメージ)

大阪地区の鉄鋼流通市場は23年夏場以降、底堅い荷動きを維持し新年を迎えた。内需は自動車関連が部品調達の進展で堅調に推移。ただ高水準生産で市場を先導してきた建機や産機向けの荷動きが世界的景況不安に不透明感を強めている。

建築建材需要は24年も既存の都市開発案件をはじめ物流倉庫やデータセンター、工場関連など大型建設物件の引き合いが順調。さらに地区では大阪・関西万博関連で軽量品種や鋼管類を中心に荷動きが活発化しそうだ。

ただ店売り需要を支える民間系中小建設案件に回復感が乏しい。さらに流通間では「万博建設に施工側の人手不足が増幅する」といった指摘もある。市中ではインバウンド向け宿泊施設への需要が根強いが「本格的な建築再開は万博工事を終えた再来年」(流通筋)との見方が大勢だ。

鉄鋼メーカーは原材料価格の上昇に加え、物流費や人件費など多様なコスト圧迫要因に鋼材製品の値上げ機運を強めている。流通間ではメーカーの値上げアピールに売り腰を強化。極端な安値販売は解消されつつある。

鋼材製品市況は春季以降、「弱含みジリ安基調から強含みジリ高への反転」(同)を想定。為替や国際情勢に不安を残しつつも「これ以上、価格は下がらない」(同)安心感から先高を期待する声が多い。

鉄鋼 【鉄スクラップ・東京地区】アジア中心に需要伸び

24年の東京地区の鉄スクラップ市況は価格帯の上昇が予想される。アジアを中心に需要の伸びが見込まれ、日本産鉄スクラップの価格が伸びそうだ。こうした状況に関東地区の大手電炉メーカーも連動し、価格を上げる可能性が高い。

鉄スクラップは、ベトナムやバングラデシュ、トルコなどからの引き合いが強い。ベトナムは、中間材(ビレット)に加工されて多くが中国に輸出される。バングラデシュは、国内のインフラ整備や経済立て直しのためにニーズが高い。トルコは地震からの復興が主なニーズだ。関東鉄源協同組合によると、「発展途上国は整備や復興の目的で、日本産鉄スクラップを求めている。24年もこうした状況が続きそうだ」。

関東地区の大手電炉メーカーは、スクラップ買い取り価格について輸出対抗の姿勢を取る。そのため海外からのニーズが高まり、同組合の輸出落札価格が上がれば、買い取り価格も上がる可能性がある。この先も海外の経済状況が市況の決め手になる。

鉄鋼 【鉄スクラップ・大阪地区】迫力欠き低位安定

大阪地区の鉄スクラップ需要は鋼材製品実需に迫力を欠き低位安定基調で推移しそう。ただ鉄鋼業界では世界的な脱炭素化の流れを受け、国内高炉メーカーが二酸化炭素(CO2)発生を4分の1に抑制可能な大型電炉設備への転換を推進中。電炉メーカーの設備増強とも相まって先行きの鉄スクラップ需要は「増えることがあっても減ることはない」(問屋筋)と楽観的な見方が大勢だ。

市況は円高傾向による輸出停滞から基調悪化が懸念される。ただ市中での発生減が慢性化しメーカー間の需給は横ばった展開が維持されそう。当面、価格面では23年同様に小幅変動が見込まれる。

一方、世界的に原材料や製品価格が上伸傾向を示す中、鉄スクラップの国際価格も「一段ステージが引き上げられる」(同)状況。今後は国内市況の高値意識を払しょくする場面を迎えそうだ。

非鉄金属 【銅】中国追加経済対策も

自動車や電子部品など幅広い用途で使われる銅の国際相場は、中国の経済動向が相場上昇のカギを握る。中でも、追加経済対策の影響が注目されている。世界最大の銅消費国である中国は、23年1月にゼロコロナ政策終了を宣言。これに伴う銅需要の回復期待などで、ロンドン金属取引所(LME)は同1月末にトン当たり9356ドル台を付けた。ただ、以降、徐々に値を下げた。同12月末に入ると小反発して8580ドル台に戻したものの、年始の高値に比べて約8%安い。

楽天証券の吉田哲コモディティアナリストによると、「24年後半は中国起因の下落圧力が弱まりやすくなるだろう。追加経済対策に期待した景気拡大の可能性がある」という。もっとも、24年を総じてみれば、大きな上昇も下落もないとの見方が市場には多い。吉田氏も「相場は1万ドルは厳しいかもしれないが、23年に付けていた8000―9000ドル辺りの水準を維持しそうだ」と予想している。

原油 乱高下の中、上値探る

24年の原油国際相場は、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国で構成するOPECプラスの追加減産をはじめ、米国の金融政策、中国の景気の三つの動向が、この先の値動きを占う焦点になりそうだ。

国際的な原油取引の指標となる米国産標準油種(WTI)先物は23年末にバレル当たり70ドル台前半で推移。9月末の年間最高値(終値)に比べ約20%安いが、コロナ禍前の19年末比では約20%高い。24年も乱高下しながらも上値を探る展開が予想される。

楽天証券の吉田哲コモディティアナリストは「24年は広めのレンジを想定しており、下が60ドル、上が100ドルを基本に考えている」という。上昇圧力が重なった場合、バレル当たり120ドルもありうるとみる。

OPECプラスが追加減産で合意できずに一枚岩になれない現状があるものの、24年末までの減産は規定路線で、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げは上昇圧力となる。

一方、不動産不況など中国経済回復の遅れは下押し要因。政府による追加景気刺激策がどこまで奏功するかが注目だ。みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストも「23年のチャートの動きを見ても、70ドル割れの水準で下げ止まってきた。70ドル割れが24年のボトム水準」と予想している。

日刊工業新聞 2024年01月04日

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