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神戸製鋼・JFE・日鉄…鉄鋼大手で出そろうも、「グリーン鋼材」普及へ山積みの課題

神戸製鋼・JFE・日鉄…鉄鋼大手で出そろうも、「グリーン鋼材」普及へ山積みの課題

日鉄のグリーン鋼材を活用し、菓子などの缶を製造・販売するメーカーもある(側島製缶提供)

普及へ指針・枠組み策定

生産時の二酸化炭素(CO2)排出量を少ないとみなす「グリーン鋼材」が、鉄鋼大手で出そろった。先行投入した神戸製鋼所に続き、2023年6月にJFEスチール、9月には日本製鉄が初受注を公表。各社ともすでに数件を成約したが、公共分野での普及や世界的ルールづくりなど課題は山積している。

グリーン鋼材は、各社による実際のCO2排出削減量を特定の商品に割り付ける「マスバランス方式」に基づき、第三者機関の認証を受けて販売される。機能や品質などは従来材と変わらないが、付加される「環境価値」分で割高になる。

神鋼は自動車向けや再開発計画などで成約。日鉄は菓子缶から熱交換器向けまで幅広く、JFEはオフィスビル用厚板などを受注した。日鉄、JFEは海外変圧器向けで電磁鋼板の採用も決まった。

注目されるのがJFEの造船用厚鋼板の案件だ。納入だけではなく、船を使う国内海運8社との間で、鋼材コストの上昇分を「環境価値」として分担するモデルを構築した。

「サプライチェーン(供給網)で広く負担する社会分配モデルは世界で例がない」(JFE)というが、同社自ら鋼材の荷主として分担に参画し、説得力ある枠組みといえる。

グリーン鋼材は黎明期とあって、鉄鋼大手は社会の理解や政府の支援に向け要請に躍起となっている。日本鉄鋼連盟は10月、グリーン鋼材の詳細ガイドライン(指針)を策定した。削減実績を示す証書付きの同鋼材を購入した顧客が使える温室効果ガス(GHG)削減量と、カーボンフットプリント(製造から廃棄までの排出量合計値)は別だとし、製品を伴わない証書単体の流通は行わないと定めた。

同鋼材の定義や透明性の担保は世界鉄鋼協会でも議論されており、鉄連は「詳細な指針を基に国際的な取り組みをリードしたい」と標準化に意欲を示す。

一方、鉄鋼を筆頭とする国内産業界で「グリーン商材市場の拡大へ、インセンティブの仕組みが必要」といった声が高まっている。

日刊工業新聞 2023年12月13日

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