ニュースイッチ

日鉄・JFE・神戸製鋼…見えてきた脱炭素製鉄、注力技術の現状

日鉄・JFE・神戸製鋼…見えてきた脱炭素製鉄、注力技術の現状

日鉄は波崎研究開発センター内に試験用の小型電炉や小規模シャフト炉を設置する

鉄鋼3社の脱炭素化技術の開発が軌道に乗り始めた。国のグリーンイノベーション(GI)基金を活用した「水素還元技術」「カーボンリサイクル高炉」や、電炉の大型化など複数案件に取り組んでいる。「どの技術が優位か今は言えない」(JFEスチールの北野嘉久社長)状況だが、各社の注力技術の現状と見通しをまとめた。(編集委員・山中久仁昭)

鉄鋼業界の二酸化炭素(CO2)排出量は国内産業界全体の約4割を占め、それだけに脱炭素化は急務。その開発・設備投資には業界全体で10兆円規模が必要とされ、多くは国家プロジェクトに位置付けられている。

水素還元技術などは3社が連携し2022年度に本格開発に着手。日本製鉄、JFEスチールはそれぞれ、小型試験電気炉(溶解量10トン)と小型還元炉の計2基で24年度以降、順次試験を始める。日鉄は波崎研究開発センター(茨城県神栖市)、JFEは千葉地区(千葉市中央区)に炉を整備中だ。

一方、国はGI基金で進める製鉄プロセスの水素活用事業を拡充すべく、関連予算を4500億円程度に倍増する。2040年代半ばとしていた実装可能時期を約5年前倒す。

日鉄/水素還元、世界最高水準

高炉主体の3社にとって電炉はCO2排出を高炉の約25%に抑えられるため、本格的な水素還元までの「移行期技術」として重視する。ただ「電炉だけで高級鋼需要は賄いきれない」とし、CCUS(CO2の回収・貯留・利用)と融合しながら高炉生産を続ける。

日本製鉄は23年、君津地区(千葉県君津市)の水素還元試験炉で外部の水素を加熱利用し、高炉からのCO2排出量を従来比22%削減する効果を確認した。同社は世界最高水準とし、当面は30%以上の削減を目指す。

試験炉は容積12立方メートルで、将来は大型高炉で50%以上の削減を目標に据える。水素還元は炉内の熱を奪う吸熱反応が課題とされ、円滑に加熱し使うための技術が求められる。

日鉄は製鉄所内で発生する水素を還元材に使う開発も進めており、君津地区の高炉実機で26年初から実証試験を行う。すでにCO2排出削減量が当面目標の10%を超す成果を上げた。容積で約400倍という大型実機(4500立方メートル)でも実証できるか注目される。

一方、日鉄は試験用の電炉や還元炉を置く波崎研究開発センターの一角を「ハイドリームズ」と命名。電炉活用を含む脱炭素化の機運を社内外で高める。

JFEスチール/CR高炉で有効循環利用

JFEスチールは高炉排ガス中のCO2を水素との合成でメタンガス化し、鉄鉱石の還元材に再利用する「カーボンリサイクル(CR)高炉」に思い入れを持つ。CO2排出量を従来設備に比べ、まずは約30%削減する。

CRの原点は約20年前、京浜地区(川崎市川崎区)で今は休止となった高炉への天然ガス吹き込みでCO2を削減できたことにある。「単なるCO2の回収・貯留では芸がない。有効活用し、循環させることは環境重視の時代に意義がある」(経営企画部)という。もちろん残るCO2排出量もゼロを目指す方針。

実証では段階的にスケールアップさせるが、まず千葉地区に容積が150立方メートルと高炉の30分の1の試験高炉を建設し25―26年度に試験を行う。メタンを使う際の高炉の反応を量や時間、酸素のバランスから把握し、最適な操業条件を探る。

同社は、ともに岡山県倉敷市に拠点を置くENEOSと水素調達・利用で連携。安価で安定した水素を確保しながら、CRの早期実用化を図る。JFEホールディングスの寺畑雅史副社長は「高炉には(電炉に比べて)生産効率などの面で優位性がある」と語る。

神鋼/自前技術で還元鉄を製造

「当社の脱炭素化はミドレックスの技術が(大型電炉の検討を含む一連の施策の)真ん中にある」と語るのは、神戸製鋼所の山口貢社長だ。

神鋼のミドレックス技術を活用してつくった直接還元鉄

同社は23年、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の高炉で熱間成形還元鉄(HBI)を使って粗鋼生産時のCO2排出量を13年度比約25%削減することを実証した。21年に実現した同約20%削減を上回り、高炉実機での削減幅は世界最高水準。完全子会社の米ミドレックス(ノースカロライナ州)の技術・設備でつくったHBIを用いた。

炭素燃料使用量を溶銑1トン当たり386キログラム、石炭由来のコークス使用量を同230キログラムにまで抑えた。同社は「現有技術で安定的、早期にCO2を削減可能」とし、30年度の同30―40%削減に向け一層アクセルを踏む。

ミドレックス技術によるHBIは高炉、電炉の両方で使え、設備は水素向け、天然ガス向け、天然ガス・水素双方に対応できるものと幅広い。鉄鋼競合の独ティッセンクルップなども使い、世界の還元鉄設備シェアの8割を握る。神鋼は還元鉄の原料である鉄鉱石について「ミドレックス技術では歩留まりに課題がある低品位品もしっかり使えるよう技術開発を進めている」という。

日刊工業新聞 2024年1月1日

編集部のおすすめ