テスラ先行・トヨタも導入…「ギガキャスト」商機に、コイワイが砂型鋳造試作事業
3Dプリンターで高精度
コイワイ(神奈川県小田原市、小岩井豊己社長)は、電気自動車(EV)の大型部品を一体成形する技術「ギガキャスト」用の砂型鋳造試作事業を始めた。ギガキャストによる量産の前段階で、砂型を用いて鋳物を試作する需要が増えると判断。3Dプリンターによる砂型立体造形技術などを活用し、ギガキャスト用試作鋳物の技術を確立した。ギガキャスト導入を検討する国内外の自動車メーカーやティア1(1次取引先)に提案。同事業で2026年までに年間売上高10億円を目指す。
EVはバッテリー重量で車体全体が重くなることが課題だ。軽量化対策の一つとして、複数の部品を一体化した大型部品をダイカスト工法で成形するギガキャストが注目されている。米テスラが実用化で先行し、トヨタ自動車も26年に投入予定の次世代EVでギガキャストを導入する方針だ。
コイワイのギガキャスト用試作鋳物は、3Dプリンターで高精度に造形した砂型を使用。さらに湯流れ・凝固のシミュレーションや、量産用材料の機械的特性を踏まえた試作用材料開発、大型薄肉砂型鋳物の熱処理などの技術・ノウハウを組み合わせた。テスト鋳造では縦120センチ×横135センチ×高さ56センチメートルで平均肉厚3ミリメートルの2分割したリアアクスルパネルの試作にも成功した。
同社は07年に国内で初めて、3Dデータを基に鋳造用砂型を製作する3D砂型プリンターを導入。ターボチャージャー(過給器)など自動車用内燃機関の鋳物部品の試作を手がけた実績がある。
だが、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けて車の電動化の潮流が強まる中、近年はエンジン用鋳物部品の試作ニーズが18年比で最大9分の1まで激減しているという。小岩井社長は「国内のギガキャストの試作需要を取り込みたい」と話す。
【関連記事】 トヨタグループも頼りにする異能の変革集団
日刊工業新聞 2023年12月26日