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鋼材使用量「減るのは間違いない」…トヨタのギガキャスト導入、鉄鋼メーカーが影響度分析

鋼材使用量「減るのは間違いない」…トヨタのギガキャスト導入、鉄鋼メーカーが影響度分析

トヨタのギガキャスト採用を受け、鉄鋼各社はまず情報収集する(自動車関連展示会での日鉄のブース)

鉄鋼大手はトヨタ自動車がアルミニウムによる一体成形技術「ギガキャスト」を導入することに対し、情報収集と影響度の分析を進めている。電気自動車(EV)の軽量化に向けた技術で、鋼材使用量が「減るのは間違いない」(JFEホールディングスの柿木厚司社長)、「減る想定で臨む」(神戸製鋼所の山口貢社長)としている。各社は超高張力鋼板(超ハイテン)を軸とするソリューションを質的に磨き上げ、車メーカーとの協調関係を進化させる考えだ。(編集委員・山中久仁昭)

トヨタ自動車が6月に導入を表明したギガキャストは、次世代のEV生産で部品点数を大幅に減らせるという。米テスラが実用化しているが、従来と異なるモノづくりとあってサプライヤーら関係者は重大な関心を示す。

日本製鉄は「同技術の得失(利得と損失)の双方、鉄でできることとできないことをしっかり見極めたい」(薄板事業部自動車鋼板商品技術室)、JFEスチールは「現時点で鉄鋼需要が影響を受ける可能性は否定できないが、自動車業界でギガキャストがどの程度採用されるか注視したい」(自動車鋼板セクター部)と語る。

自動車の軽量化は石油ショックを機に叫ばれるようになったとされ、半世紀に及ぶテーマだ。鋼材にとってのライバルは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など数あるが、メーンはアルミであり、両業界は切磋琢磨を繰り返してきた。

その結果、アルミは一部の骨格部品やドア、ルーフなどパネル部品などに採用されてきたが、材料価格・コストから高級車向けとされてきたのが実情だ。

アルミは比重が鉄の約3分の1と軽いが、鉄は板厚を約3分の1にして対抗。鉄は生産時の二酸化炭素(CO2)排出量がアルミより少なく、リサイクルのシステムも確立している。

鉄鋼業界ではアルミは「薄肉化に限界がある」との声が聞かれ、鋼材では部品ごとに最適な強度と板厚を設定できる“適材適所”が持ち味と言いたげ。ただ、ある要素をとことん追究すると加工性が悪くなる相反関係は、どの素材も同じ。それを解決すべく開発や改良を重ねている。

鋼材のほかにアルミ板事業を手がける神戸製鋼所の山口社長は「当社が得意な部分、不得意な部分とさまざまなはずで、(同じアルミ業界内であっても)競争が激化するだろう」と慎重な構え。

いずれにせよ鉄鋼各社は「守るべき点、補完できる点がどこか精査する。鉄の特性が発揮できる用途を提案していく」(JFEHDの柿木社長)姿勢に変わりないようだ。


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日刊工業新聞 2023年08月03日

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