86部品33工程を1部品1工程に削減…トヨタが導入する生産技術「ギガキャスト」とは?
トヨタ自動車は4日、2026年に投入を予定する次世代電気自動車(EV)で、部品点数を大幅に削減できる生産技術「ギガキャスト」を導入する方針を明らかにした。大物部品をアルミダイカスト(鋳造)で一体成形することで、数十もの部品を統合し、コスト削減を実現する。生産工程やサプライチェーン(供給網)が大きく変わる見通し。車載電池などコスト負担の大きいEV事業の収益力向上につなげる。
トヨタは26年の次世代EVで、プラットフォーム(車台)など車両構造を刷新する計画。BEVファクトリーの加藤武郎プレジデントは、ギガキャストの採用で「部品点数が大きく削減され、工程がなくなるため、工場の土地を有効活用できる」とコスト圧縮効果を説明する。
ギガキャストの手法は、米テスラなどが採用している。トヨタは次世代EVで車両を前部、中央部、後部に3分割し、それぞれを一体成形するモジュール構造を想定。6月に披露した後部の試作品では、従来は86部品、33工程必要だった部品生産を1部品1工程にした。このほか前部であれば、90部品を削減できるという。加藤プレジデントは「骨格部分も一体化できるため、剛性を高められる」と、走行性能面でもメリットが出るとみる。
ただ複数部品をまとめるギガキャストは、1部品が大型化するため、損傷時に修理や交換がしにくいデメリットがある。既存の車は衝突しやすい部分によって素材を変えるなど、交換しやすい構造を取り入れている。中嶋裕樹副社長は「軽微な衝突の場合は部品交換するという考え方は、ギガキャストでも同様だ」とする。
トヨタは18年にギガキャスト用の装置を導入し、活用を検討してきた。実用化の際の生産場所などは、今後検討するという。また車台が自走して次工程まで移動する「自走組み立てライン」も合わせて、生産工程や設備投資などの半減を目指す。これらの技術はEV以外の車両生産にも適用していく方針だ。
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