三菱UFJ・みずほ・りそな…「金利ある世界」に備える銀行業界、首脳たちの声
日銀の動き注視
銀行業界は「金利ある世界」に向け、預金獲得や貸出金利の引き上げなど準備を進めている。11月以降、大手行や地方銀行が定期預金の金利引き上げに相次いで踏み切った。日銀による長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の運用柔軟化によって長期金利が上昇したことを反映した。
日銀は10月末、金融政策の運用方針を修正することを決定。長期金利の事実上の上限を厳格に1%以下としてきたが、それを1%めどに緩和した。
これを受け、三菱UFJ銀行が定期預金の金利を引き上げることを発表。10年物の金利を足元の100倍となる0・2%に設定した。預金者が金利の高い銀行に流れてしまうという懸念もあり、他行も後に続いた。ある大手行幹部は三菱UFJ銀の金利引き上げについて「今後を見据え『金利を重要視していく』というメッセージを先駆けて世間に打ち出したい思いもあったのではないか」と指摘する。
みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長も11月の決算説明会で金利のある世界に備えて「預金を取ってビジネスをする原資をしっかり稼ぎたい」と強調。今後、日銀がマイナス金利を解除すれば貸出金利が上昇し、利ざやで稼ぐビジネスをしやすい環境となるため「いかに低コストで多くの預金を集められるかが重要」(大手行幹部)となっている。
りそなホールディングスは、マイナス金利解除によって収益が100億円押し上げられると見積もる。それだけに南昌宏社長は「(金利上昇が)どのタイミング、どんな手法で起きるのか、いろいろシミュレーションしている」と話す。
今後の焦点の一つは、マイナス金利の解除後に各行が企業向け貸出金利を想定通りに引き上げられるかだ。ある大手行幹部は「金利がこの水準になるとこういう対応を取るとある程度決めている。ただ、他行も絡むので1対1では済まないケースが多い」と明かす。貸出金利の引き上げ提案や説明がほとんどない環境が長く続いてきたため、融資先との関係強化が一層重要な局面となりそうだ。
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