主要証券10社は全社増収…株高で取引旺盛に
株高を背景に証券会社の業績が急回復している。大手・純大手の主要10社の2023年4―6月期決算は、いずれも増収、経常増益・黒字転換となった。日経平均株価が33年ぶりの高値をつけるなど相場の活況から株式取引が旺盛となり、収益を押し上げた形だ。一方で、相場の変動に左右されやすい収益構造は業界の長年の課題で、安定した収益源の育成が急がれる。コスト負担の重い事業の再構築も必要だ。
リテール(個人)の収益回復が鮮明だ。野村ホールディングス(HD)は営業部門の税引き前利益が前年同期比4・7倍の229億円となった。対面営業の人員を富裕層領域に重点的に配置するなど、「より的確に顧客のニーズに応えるための体制を整備した」(奥田健太郎グループ最高経営責任者〈CEO〉)ことが回復ペースを速めた。大和証券のリテール部門の経常利益は同2・2倍の135億円で、18年1―3月期以来の高水準となった。
ネット証券の業績も好調だ。SBIHDは収益、税引き前利益ともに4―6月期として過去最高を更新した。SBI証券の国内株式委託売買代金は同40・5%増を記録し、業績拡大をけん引した。ネット専業のマネックスグループ、松井証券は株式売買代金がともに同約4割増となった。
法人部門は各社の業績に差が出ている。みずほ証券はグローバル投資銀行の経常利益が同2・3倍と伸長し、三菱UFJ証券HDもグローバルマーケッツとインベストバンキングが増収だった。野村HDはホールセール部門の税前利益が同92%減少した。「収益の落ち込みは経費率の高さ」(北村巧執行役)と分析し、人員の再整備など経営資源を最適な配分に見直している。25年3月期までにコストを500億円引き下げる計画だ。
大和証券もホールセール部門を中心に22年度に300億円のコストを削減しており、23年度以降も追加で100億円超のコスト削減を実施する。法人部門は市況の影響を受けやすく、全体の業績を安定させるためにも市況と相関が低いビジネスの育成が求められる。
株式売買の委託手数料を巡っては、SBIHDが国内株式のオンライン取引を上期(4―9月期)中に無料化する計画だ。委託手数料などのフロー収入に代わり、預かり資産残高に応じたストック収入が安定収益の柱として欠かせない。足元の株高や物価高、少額投資非課税制度(NISA)の24年拡充を受けて資産形成の機運が高まっており、証券業の商機は広がっている。追い風が吹く中で目先の株式売買委託手数料を追うだけでなく、安定した収益構造に変革できるかが問われる。