貨物運送の倒産急増、物流「2024年問題」到来待たず…
2024年4月からトラックドライバーの残業が年間で960時間に制限される「2024年問題」まで半年となる中、その影響が出始めている。信用調査大手2社の調べによると、23年1―9月期の道路貨物運送業者の倒産件数はすでに例年を大幅に上回った。燃料価格の上昇、ドライバー不足、コロナ緊急融資の返済などが要因だ。政府は物流革新緊急パッケージで対策に乗り出したが「足元の中小零細の倒産は止まらないだろう」(帝国データバンク)と見る向きもある。(編集委員・板崎英士)
帝国データバンクの調べによると、23年1―9月の道路貨物運送業者(トラック運送、宅配便)の倒産件数は220件で、前年同時期の169件を大幅に上回った。200件を超えるのは軽油価格が大幅に上昇した14年以来9年ぶり。倒産理由は燃料などの物価高が82件、人手不足が28件だ。
東京商工リサーチの調べでも、同期間の倒産件数は234件。前年同期は174件で、3年連続で前年同期を上回った。倒産理由も物価高が85件だが、人手不足は前年同期の2倍の30件で、集計を開始した13年以降では最多という。
倒産が増える背景には燃料価格の高騰分や荷待ち、荷役などのコストが適正に運賃に反映されない実態がある。帝国データが7月に行った調査では、運輸・倉庫業ではコストが100円上昇した場合に26・2円しか請負価格に反映できていない。ただ「企業努力で価格転嫁したところもあり、ドライバーがそうした条件のよい企業に移って差が広がっている」(情報統括部)という。受注してもドライバー不足で対応できず、事業を断念する悪循環だ。
国は6日に「物流革新緊急パッケージ」を取りまとめ、コンビニエンスストアでの受け取りなどによる再配達の半減や自動化、機械化の推進による効率化、荷待ちや荷役時間を標準運賃に含めることで賃上げ減資の確保、10年後をめどに船舶や鉄道輸送を倍増しドライバー不足に対処するとした。野村総合研究所は今の状況が続くと30年には全国の35%で荷物の配送ができなくなると試算しており、政策の実行力が問われている。
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