安値輸入品vs機能の国産…ティッシュなど衛生用紙、顧客争奪戦の行方
印刷・情報用紙や段ボール原紙などの需要が低迷する中、ティッシュペーパーに代表される衛生用紙は堅調だ。諸物価高騰で人々の生活防衛意識が高まり、箱型より経済的なソフトパックティッシュ、取り換え頻度が少ない長巻きトイレットロールが伸びている。ただ国内勢にとって、低価格の輸入品の流入増は懸念材料といえる。
国内ティッシュ市場でソフトパック型が占める割合は2023年度上期に23%超(金額ベース、インテージ調べ)で数年前の約4倍。包材が柔らかく持ち運びが容易で、キッチン周りやかばんの中など狭い場所に置ける。
同様にトイレットロールのうち「2倍」「3倍」といった長巻き型の割合は40%超(同)で数年前の約3倍になった。ロール交換や購入の頻度を減らせ、物流関連のコストや二酸化炭素(CO2)排出量を抑えられる利点が浸透しつつある。
こうした状況下で悩みの種は、輸入ティッシュの存在だ。中国やインドネシア産などで、ソフトパック型が多く国産品より割安。国内ティッシュでの輸入品比率は23年度上期で22%超に及ぶ。
輸入品攻勢に日本家庭紙工業会の小川満会長(大王製紙上席執行役員)は「価格が下方に引っ張られてしまう。国内勢は品質や付加価値で戦う」と語る。
多くの人々は価格に敏感になっている。原燃料高騰や為替の急激な円安などの影響を受け、衛生用紙は22年以降、複数回にわたり値上げされたこともある。
小川会長は「家庭紙は世帯の浸透率も高く、底堅い需要がある一方、今後の大幅な需要増は見込み難い」という。こうした中で顧客は「ともかく安ければ良い」派と、「コストよりも環境や機能を重視する」派の二極化が鮮明化する見通しだ。
物流の24年問題や原料である古紙不足などで難題に直面すれば、衛生用紙は適正価格で商品価値をより高めざるを得ない。ティッシュが小売店のチラシに「集客の目玉」として従来のようには載らなくなる日が来るのかもしれない。