アサヒ・サントリー…酒類・飲料メーカーが推進「物流の2024年問題」解決へのポイント
酒類・飲料メーカーが「物流の2024年問題」に対応するための課題解決にはいくつかのポイントがある。大別すると長距離トラック輸送の削減と、輸送の効率化、配送に伴う付帯作業の削減といったテーマだ。各社が長距離輸送を鉄道や船舶によるモーダルシフトを進める方針。配送では全国をエリアに分けそれぞれで「地産地消」型で完結できるようにするほか、トラックの積載効率を高める。付帯作業もトラック事業者や卸業者と連携して削減を進める。
酒類・飲料メーカーの物流では社内での「転送」と、需要先向けの「配送」が存在する。転送は工場から製品を各地の主要な配送拠点に輸送し、品ぞろえを整える。その配送拠点から得意先の注文に応じて商品を届けるのが配送だ。各社はこの転送と配送のそれぞれで効率化に取り組む。
アサヒグループジャパンの場合、転送で500キロメートル超の長距離をトラック輸送するケースがあり、この削減を進める。井石明伸SCM部副部長は「特に700キロメートルを越える距離は1人のドライバーで運ぶことはできなくなる。この部分を優先してモーダルシフトに替える」と方針を明かす。700キロメートル超でのモーダルシフト率は8月に50・1%と前年末に比べ7・5ポイント上昇。27年頃には60%に引き上げる計画だ。
サントリーホールディングスも転送のモーダルシフトに力を入れる。大泉雪子物流部部長は「当社グループは東日本から西日本への輸送量が多い。その逆のメーカーと組めば効率化が見込める」と指摘。22年夏に大王製紙グループと共同で東京―大阪間の鉄道コンテナの相互活用を始めた。「両社の取り組みを23年秋には拡充した」とし、四国―東京間にも拡大している。
このほか、JR貨物の東京―盛岡間で東京からの貨物に空車があることに着目。今夏に東北エリアへの転送の一部を鉄道輸送に切り替えている。海上輸送用40フィートの大型コンテナを活用することで効率化が見込める。
単純に長距離を鉄道などに変更すれば良いというわけではない。例えば、東京―大阪間の500キロ―700キロメートルはモーダルシフトへの課題が残る。アサヒグループの井石副部長は「東京―大阪間は最も輸送量の多い重要ルートなだけに、当面はトラック輸送を残す」という。同社の場合、区間内に名古屋工場(名古屋市守山区)と富士山工場(静岡県富士宮市)があり、両工場を中継地として貨物を積み替える「中継輸送」を実施する方針だ。
同社はこれ以外にも「1人で運べる輸送量を増やす計画もある」(井石副部長)という。これはトラックをトレーラー化し、ダブル連結トラックとして2倍の貨物輸送を可能にする計画だ。