iPS細胞で子宮頸がん治療、順天堂大が開発
順天堂大学の安藤美樹教授らは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を利用した新たな子宮頸(けい)がんの治療方法を開発した。iPS細胞を全遺伝情報(ゲノム)編集し、患者の免疫細胞から拒絶されずにがんを抑制できることを明らかにした。2024年夏にも同治療法による子宮頸がんを対象とした医師主導治験を開始する予定。患者への負荷が少ない新たながん治療の手法確立につながると期待される。
米スタンフォード大学との共同研究。成果は13日、米科学誌セル姉妹誌に掲載された。
健常者のiPS細胞を利用しゲノム編集技術の一つである「クリスパーキャス9」を使い、免疫反応を軽減できる「ヒトパピローマウイルス特異的細胞傷害性T細胞(CTL)」を作ることに成功した。CTLには体内に侵入した敵が再度現れた時に素早く攻撃できるメモリーT細胞を含んでおり、がん細胞に対して高い傷害活性を示すことが分かった。この特性は難治性の子宮頸がんの治療にも応用できるとみており、治験で患者に対する効果を確かめる。
子宮頸がんはワクチンが普及したことで患者数や死亡率が減少しているが、日本ではワクチン接種率が15%以下と低く年間約3000人が死亡している。結婚や妊娠、子育て世代の女性の進行が速く予後不良であるという特徴を持つことから、有効な新規治療法開発が必要とされていた。
日刊工業新聞 2023年12月13日