量子コンピューター「国産機」稼働相次ぐ、日本が世界に伍する足場が固まった
3月、量子コンピューターの国産初号機「叡(えい)」が埼玉県和光市の理化学研究所で稼働した。10月には2号機が稼働し、量子技術の研究開発競争において、日本が世界に伍(ご)していくための足場が固まった。これまで国内にある量子コンピューターの実機は米IBM製の商用機と試験機の2台のみだったが、国産機の相次ぐ稼働により、産業界との共同研究にも弾みがつきそうだ。
国産初号機は超電導方式で64量子ビットを形成できる仕様。まずは53量子ビットでスタートし、エラー耐性への対応などの技術革新に挑むとともに、産業界とのアプリケーション開発を促進するテストベッド(試験環境)の役割を担う。
一方、2号機は初号機と同様に、理研と富士通の共同開発の成果。理研の中村泰信量子コンピュータ研究センター長は「初号機と2号機はハードウエア開発とソフトウエア開発で両輪となる」とそれぞれの役割を述べる。
2号機は民間主導では初の国産機という位置付けもあり、富士通の佐藤信太郎量子研究所長は「既存の古典コンピューター上で動作する40量子ビットの量子シミュレーターと、量子コンピューターをシームレスに連携するハイブリッド基盤を実装した」と特徴を強調する。
量子と古典のハイブリッド化は旬のテーマだ。理研は国産機の開発とは別に、11月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、スーパーコンピューター「富岳」の活用をベースに、量子・スパコン連携プラットフォーム(基盤)の研究開発に着手すると表明した。
これに基づき、理研はIBM製の超電導型量子コンピューターと、米クオンティニュアム製のイオントラップ型量子コンピューターの計2台を2025年度以降に国内導入する。同プロジェクトにはソフトバンクも名を連ねているなど、プレーヤーも多彩になってきた。24年も量子研究の動向から目が離せない。