従来比10―100倍…ナノワイヤを高密度・高均一形成、電通大が結晶成長技術
電気通信大学の山口浩一教授らの研究グループは、従来比10―100倍の高い密度でインジウムヒ素製の量子ナノワイヤ(量子細線)をシリコン基板上に高均一に作製した。次世代の縦型トランジスタやメモリー、量子ドット構造を内蔵した量子細線レーザーや量子構造太陽電池、量子ナノセンサーなどの高性能化につながる。
山口教授らは分子線エピタキシー(MBE)法を使って、シリコン基板表面の酸化膜にガリウムのナノ液滴を堆積。基板の加熱による反応過程を経てナノメートル(ナノは10億分の1)寸法のピンホールを形成した。
この酸化膜のピンホール底のシリコン基板結晶からインジウムヒ素の単結晶核を作り、そこから高さ方向に成長したナノワイヤが形成されたことを確認した。ナノワイヤの標準偏差(バラつきを表す指標)は8・8%と高均一。微小な半導体結晶内で異なる性質が現れる「量子サイズ効果」を発現する。
半導体を直径数十ナノ―数百ナノメートルの柱状に成長させたナノワイヤは、光電子デバイスの集積化や高効率化に寄与すると期待されている。だが高密度で高均一なナノワイヤ構造の作製は難しく、高度な結晶成長技術の開発が求められていた。
米物理学協会発行の学術誌ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクスに掲載された。
日刊工業新聞 2023年12月07日