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伝送映像を“動く3D点群”で再現、NTTの新システムが実現する映像体験

伝送映像を“動く3D点群”で再現、NTTの新システムが実現する映像体験

3D点群

NTTは高機能センサー「LiDAR(ライダー)」とデジタルカメラで計測した空間のデータを遠隔地のディスプレー画面に伝送し、動きのある3次元(3D)点群データとして再現するシステムを開発した。視聴者が見たい角度を自由に選択し、動作する人物や物体を3Dで確認できる。橋の設備点検などに使う点群データを“動く点群”に応用。コンサート中の歌手や試合中のサッカー選手などを再現できる3D動画配信としての実用化を目指す。

照射したレーザーの反射速度の時間差で物体との距離を計測するLiDARを用い、対象空間にある人物や物体の点を作成。この点にデジタルカメラ(RGBカメラ)の映像を基にした色を付け、色付きの点群を生成する。

ダンサーの動きをリアルタイムに再現できる

対象空間の3カ所に置いたLiDARとデジタルカメラで作成したそれぞれの3D点群データに加え、事前に計測した背景の点群データを処理システムで統合。このデータを遠隔地に送信することで、送信先のディスプレー画面上に3D点群で構成したカラー映像を表示する。

現状では、画面上に250万程度の点で構成した3D点群映像を表示できる。将来はLiDARが照射するレーザー光(走査線)を増強するほか、現状ではハイビジョン(HD)で撮影している動画の画質を4Kなどにすることで表示できる点を増やす。2025年度をめどに現状よりも高度な処理システムの構築を目指す。

ネットワークから端末までを光で結ぶNTTの低遅延通信技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」を使って遠隔地のディスプレー上に3D点群データを伝送する実証実験も実施した。実験では、NTTの横須賀研究開発センタ(神奈川県横須賀市)のスタジオで踊るダンサーの計測データを、APN経由で約100キロメートル離れた武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)に伝送。ディスプレー上で3D点群の動きを視聴でき、タイムラグも実際の動きの約1秒遅れ程度に抑えられたという。

日刊工業新聞 2023年12月05日

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